【 地域へのまなざし(7) 】 ありのままを認める

 
【 地域へのまなざし(7) 】 ありのままを認める

「子どもの実態に即した支援を、地域で取り組んでほしい」と語る本多特任教授

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の後の子どもたちの現状や地域社会との関わり方などについて、福島大うつくしまふくしま未来支援センターで子ども支援に当たる本多環(たまき)特任教授(52)に聞いた。

 --震災と原発事故が子どもにもたらした変化とは。

 「学校、地域、家庭という三つの環境変化に見舞われた。避難している子どもは故郷の喪失などを余儀なくされたし、避難していない子どもも、友達が転校したり、放射線不安から外遊びが制限されたりしたことで、ストレスの増大や自己肯定感の低下があらわれている」

 --そうした変化による具体的な影響とは。

 「体力・運動能力の低下などが見えてきたが、いまだ見えていない影響も大きいと思う。震災、原発事故からの4年間で、子どもたちが培うことができなかった能力とは何なのかを見いだし、低下した能力を『埋め戻す』教育が求められる」

 --それを実現するには、どうすれば良いか。

 「学校教育だけでは限界があり、学校、地域、家庭の3者で教育を担う必要がある。特に、地域には子どもたちが今抱えている課題に気づき、実態に応じた支援を行うことが可能な、人生経験の豊富な人たちがたくさんいる。地域での教育は有効だ。学校で課題を抱えた子どもであっても、伝統行事に参加するなどの地域活動を通じて、その子ども固有の良さを認めてもらえる。子どもの自己肯定感を高めることにもつながる」

 --震災、原発事故の後、地域貢献への意欲を語る子どもが増えたように感じる。

 「古里の良さは、当たり前に暮らしていると感じにくいもので、被災した状況の中だから地域への関心が高まった--という面はあると思う。ただ、注意すべきなのは、周りの大人が『そうしなくてはならない』という価値観を押しつけてはいないか--ということ。外からの支援への感謝などをきっかけに、地域貢献の思いを強くするというのはすばらしいことだが、まだそこまで受け止められない子どももいる。まずは、子ども一人一人のありのままの姿を認めてあげてほしい」=「地域へのまなざし」おわり