【 天栄村・二岐温泉 】 自然と一体...至福の岩風呂 天然の川床活用

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二岐川のせせらぎが心地よい大丸あすなろ荘の露天風呂。河原の岩を組んで造った湯船につかり、身も心もゆだねる

 新緑のブナ林に覆われた急峻(きゅうしゅん)な山あいを流れ下る二岐川。そのすぐ脇にある石造りの露天風呂は、まるで川の一部のようだ。明るい緑色のブナの葉を透かしてこぼれ落ちる陽光を浴び、身も心もすべて任せるように湯につかる。川の流れが陽光を反射し、川それ自体が発光しているかに見える。

 中通り西部に位置する天栄村でもさらに西端にある二岐(ふたまた)温泉郷は、中通りと会津との分水嶺(れい)となる二岐山の東側山麓にある。東北道須賀川インターチェンジから車で約1時間。田園地帯を過ぎ、羽鳥湖高原からさらに山間部に入ると、ようやく小さな温泉郷が姿を現す。

 山々に囲まれたたたずまいは、まさに「秘湯」の趣。平家の落人が住み着いたとの言い伝えも残り、そのためだろうか、古くからにぎやかな祭りや、時を告げる鶏の飼育などは禁じられていたという。

 この温泉郷の中で最も古いとされる「大丸あすなろ荘」の開湯は、平安中期の安和2(969)年。「かつては村人の骨休めの場であり、厳しい自然の中で生活していた人々の休養、診療の場であったようです」。現在の館主佐藤好億(よしやす)さん(73)は50代目というから驚く。

 享保13(1728)年、天然の川床をそのまま生かした自噴泉岩風呂が造られた。川沿いの露天風呂とは別に、現在の川岸から10メートルほど上った位置にあり、その名の通り浴槽の底の岩の割れ目から小さな気泡を出し、温泉が湧き出している。でこぼこした浴槽の底には小石が水流で転がって削り取られた丸い穴「ポットホール」があり、そこがかつて川床だったという時の流れを雄弁に物語っている。

 泉質はカルシウム硫酸塩泉。切り傷によく効くとされ、また保湿・保温効果も高く「若返り効果」も期待できる。

 ◆ブナ林の贈り物

 現在湧き出ている温泉は、二岐山に降った雨や雪が地下に染み込み、数十年の時を経ているという。地熱ばかりでなく、山々が保ってきた水もこの温泉の「育ての親」。しかし、高度経済成長期にブナ林の伐採が進められた。当時、佐藤さんは関係団体に自然破壊の愚やブナ林の価値を訴え、過剰なブナ林伐採を阻止した。現在の豊かな温泉は、その数十年前に守ったブナ林からの贈り物でもあるのだ。

 佐藤さんは40年ほど前に「日本秘湯を守る会」を立ち上げ、全国の温泉地を回り、温泉文化の維持、振興に奔走した。「山奥に暮らしているからこそ、自然の恵みを実感する。そして温泉こそ、まさに地球や自然からの人への恵みではないかと思うんです」。佐藤さんの穏やかな言葉がブナの林の湯けむりの中、重みを増す。

 再び川沿いの露天風呂へ入り、目を閉じると、たくさんの音の存在に気付く。複数の鳥の声、川のせせらぎ、春ゼミにカジカガエルも加わり、心地よいアンサンブルを奏でている。「こういう時間こそ、至福の時と言うのだろう」。温泉と涼風に身をさらし、自然が織り成すハーモニーに耳を傾けた。

 【メモ】大丸あすなろ荘=天栄村湯本字下二俣5。別館の橅山荘(ぶなさんそう)では食事を省いた連泊などにも対応する。

天栄村・二岐温泉

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 【中世英国の街を再現】二岐温泉郷の東側に広がる羽鳥湖高原にはゴルフ場やキャンプ場、スキー場など多彩なレジャー施設や別荘が数多い。四季を通じて県内外から多くの人が訪れる本県を代表するリゾート地だ。「ブリティッシュヒルズ」は7万3000坪の敷地に、中世英国の街を再現した。英語研修施設や英国の民家を再現した宿泊施設のほか、英国料理やビールが楽しめるパブ、雑貨や紅茶、菓子の店舗、さらにはテニスやガーデンゴルフのコートも備えている。

天栄村・二岐温泉

〔写真〕中世英国の雰囲気を味わえる「ブリティッシュヒルズ」