【 いわき市・白鳥山温泉 】 駅から10分の『秘湯』 ぜいたくな時間

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岩肌を利用した洞穴のような造りが特徴の混浴場。時間がたつのを忘れて自然を楽しめる

 いわき湯本温泉郷の奥座敷という呼び方がしっくりくる。「フラ女将(おかみ)」でにぎわいを取り戻そうと奮起するJR湯本駅周辺の温泉街から離れ、通称「馬の温泉」に続く一本道を進むと現れる、森の中に溶け込んだ木造の一軒宿。頬をなでる優しい風が歓迎してくれているようだ。暑苦しさを増長するセミの鳴き声さえも、心地よく聞こえてくる。

 電気音は一切聞こえてこない。「仕事を忘れて温泉ざんまい。何もないぜいたくを感じてほしい」という旅館の狙いがそこにはあった。1万坪の広大な敷地に広がる360度の大自然は、四季の魅力を余すことなく体感できる。マイナスイオンたっぷりの森林浴だ。海から吹き上げる風で周辺の市街地より3~5度ほど低く、気持ちいい。駅から10分の場所とは思えない絶景に包まれると、日本秘湯を守る会に浜通りで唯一加盟しているというのも納得だ。

 江戸時代の終わりに開業した歴史ある宿。白鳥が傷を癒やしている泉があり、その泉を調べると鉱泉だったというのが「白鳥山温泉」の始まり。神経痛、リウマチ、肩こりに効くとされ、14度ほどの鉱泉を41度程度に沸かして提供する薬効に優れた湯治場として人気だった。

 ◆2度おいしい宿

 「元湯喜楽屋」から「喜楽苑」に改称したのは1995(平成7)年10月。「馬の温泉」まで引かれていた湯本温泉から引き湯して、鉱泉と温泉が楽しめる温泉場に。弱アルカリ性の硫黄泉で疲労回復し、鉱泉で芯から温まる。1泊で2度も3度もおいしい。

 温泉の目玉は、快朗洞穴露天風呂と特別貸し切り露天風呂。快朗洞穴露天風呂は、60段の階段を下りてたどり着く離れにある。岩肌を利用した洞穴のような造りが特徴の混浴場(女性限定の時間あり)。無色透明の湯は、肌にまとわりつくようなしっとり感があり、風呂から上がると肌がすべすべで若返った気がする。

 貸し切り露天風呂は、旅館専務の菅野一徳さん(73)が15年ほど前に約2カ月かけて完成させた自慢の場所。東日本大震災で被災、修繕して配管がむき出しで手づくり感が満載だが、「風情と愛嬌(あいきょう)があっていい」と逆に好評だ。植木鉢を改良した湯口から注がれるチョロチョロと奏でる湯の音と、湯船から眺める満天の星は、時間を忘れさせてくれる絶好のロケーション。菅野さんは「喜んでもらえる温泉宿になれば」と1回30分限定の露天風呂を造った経緯を話した。

 風呂は、内風呂2、快朗洞穴露天風呂1、貸し切り露天風呂1、鉱泉2のほか、女性専用露天風呂が一つある。「やっぱり決定権は女性だよ。女性が気に入れば男性は付いてくるでしょ」。間違いない。

 心ゆくまで温泉につかり、いわきの新鮮な野菜、魚介類を味わえる。お忍びで訪れる人にも人気の隠れ宿は、家族的なもてなしで心をつかんでいる。仕事に追われている人にとっては、週末に行ける桃源郷だ。

 【メモ】白鳥山温泉 杜のおやど喜楽苑=いわき市常磐白鳥町勝丘119。1泊2食付き1万2800円から。日帰り会食(個室、オリジナル加茂弁当付き、要予約)5000円。日帰り入浴あり。すべて税込み。

いわき市・白鳥山温泉

 ≫≫≫ ほっとひと息・湯のまちの愉しみ方 ≪≪≪

 【道の先には「馬の温泉」】喜楽苑に向かうには日本中央競馬会(JRA)専用道路を通る。同専用道路の先には「馬の温泉」として知られるJRAの「競走馬リハビリテーションセンター」がある。故障した競走馬をいわき湯本温泉の湯で回復させる施設で、競馬ファンが見学に訪れる。平日午前9時~同11時のみ見学可能。スイミングプールや温泉(足湯)、温泉を使った歩行訓練のプログラムの様子を見ることができる。

いわき市・白鳥山温泉

〔写真〕いわき湯本温泉を使った温泉療法でリハビリする競走馬を見学することもできる