【 福島市・もにわの湯 】 ダムが生んだ非日常 調査試掘で源泉発見

 
すべすべした肌触りの湯が魅力で、繰り返し訪れるファンも多い

 程よい非日常感というのは、このような場所を言うのかもしれない。

 福島市中心部から北西に約20キロの飯坂町茂庭地区。摺上川の流れに沿って山あいの集落を抜けると、高さ105メートル、長さ718.6メートルの摺上川ダムの威容が現れる。ダム麓の茂庭広瀬公園の一角に、日帰り温泉施設「もにわの湯」がある。

 オープンは1999(平成11)年。ダムの調査試掘で見つかった源泉を利用して整備された。当初は地元住民の保養施設としての意味合いが強かったが、評判が口コミで広まり、現在は市内外から年間10万人ほどが訪れる人気スポットになっている。

 施設は、住民らでつくる特定非営利活動法人「茂庭っ湖の郷」が市の委託を受けて運営する。同法人の花房誠理事長(65)は「地域のにぎわいの拠点として役割を担ってきた。さらなる発展に向けて新たな取り組みにも力を入れたい」と話す。

 広い駐車場に車を止め、建物に向かうと、「いにしえの旅人の笠(かさ)」をイメージして設計されたという屋根が目を引く。中に入ると、地元に伝わる大蛇伝説にちなんだ蛇のオブジェが天井からつるされている。受け付けを済ませ、奥の浴室へ。毎月22日に男湯と女湯が入れ替わるが、どちらもガラス張りの開放的な内風呂と、茂庭の自然石を使った露天風呂を備える。タオルやせっけんは持参するのが、ここのスタイルだ。

 泉質はアルカリ性単純温泉。神経痛や筋肉痛、五十肩のほか、切り傷ややけどにも効果があるとされる。湯上がりがすべすべとした肌触りになることから「美人の湯」の異名も持つ。湯温は42度ほどで、熱い湯で知られる飯坂温泉とは対照的。開放的な雰囲気も手伝って、ついつい長湯をしてしまう。

 湯上がりには、広さ40畳の畳敷きの休憩室でのんびりとくつろげる。水分を取りながら、仲間や地元の人とゆったり語らうのもいい。常連客か、弁当やカップラーメンを持ち込み、食事を楽しむ人たちの姿もあった。

 ◆地元産で旬の味

 温泉を堪能した後は、隣接する「茂庭ふるさと館」に立ち寄った。館内には、そば処(どころ)「霧華亭(きりはなてい)」と農産物直売所「来夢来人(らいむらいと)」がある。座敷に上がり、茂庭産のそば粉を使った十割手打ちそばと天ぷらのセットをいただいた。そばは隣の製粉所で粉をひき、その日に使う分だけを打って提供する。天ぷらの野菜や山菜もほとんどが地元産。茂庭の旬が味わえる。

 取材を終えて外に出ると、寒空の下だというのに体がぽかぽか温かい。温泉成分のおかげだろう。車で山道を下り、自宅に戻る。そこにあるのは何も変わらない日常の暮らし。でもなぜか、少しだけ頑張れる気がする。これも温泉の効能なのだろうか。

 【メモ】もにわの湯=福島市飯坂町茂庭字清水川原21の2。12歳以上250円、1歳以上120円。午前9時~午後9時。

福島市・もにわの湯

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 【立体模型で仮想ツアー】もにわの湯から車で5分。摺上川ダムインフォメーションセンターには、豊富な模型やパネルが展示され、楽しみながらダムの役割を学べる。立体模型の「バーチャルダムツアー」は、画面で疑似的に空からダムを眺めたり、水中に潜って魚を捕まえたりできる。実際に水を流して洪水を防ぐ仕組みを確認できる「洪水調節シミュレーション模型」、茂庭地区の自然や文化を学べるコーナーもある。来館者にはダムカードとポストカードをプレゼント。3日前までに5人以上で申し込むとダム内部の見学ができる(平日のみ)。入館無料。時間は午前9時~午後4時30分。年末年始休館。

福島市・もにわの湯

〔写真〕ダムの役割を学べるインフォメーションセンター