【 大玉村・フォレストパークあだたら 】 温泉で森の恵みに身を任せ
安達太良山麓の緑豊かな自然に囲まれた大玉村の森林の中にあるふくしま県民の森「フォレストパークあだたら」。標高600メートルに位置する広大な敷地は約90ヘクタールに及ぶ。オートキャンプ場などのイメージが強いが、実はビジターセンター内の温泉を目当てに訪れる利用者も多い。
JR本宮駅から車で約30分。施設は自然環境や生活の質への関心の高まりを受け、森林空間を利用して自然や環境の仕組みを学び、自然と触れ合える場として1998(平成10)年に開所した。「森林(もり)との共生」を基本コンセプトに掲げており、多くの人がより森林や自然に親しめるようにと温泉が整備された。
同村に温泉街はない。旅館やホテル、村温泉宿泊保養施設などそれぞれが掘削を行って温泉を開拓しており、源泉は異なる。フォレストパークあだたらでは96、97年に整備を進め、約600メートルの掘削で源泉を掘り当てた。源泉はナトリウム炭酸水素塩泉で、泉温は55.8度。俗に言う「ヌルヌル湯」は、森にたたずむ美人の湯といったところか。
◆温泉が付加価値に
利用促進担当の遠藤史貴さん(39)に話を伺いながら、実際に湯を楽しんだ。内湯と露天風呂が男女それぞれあり、露天風呂から見える風景はまさに自然そのもの。肌にぬめりを感じながらホッと一息。温度も42度ほどでちょうど良く感じた。湯口は少し高い場所に設置されており、さながら打たせ湯のような様子が風情を感じさせる。
周囲を見渡すと、地面には雪が積もり、木々は葉が落ちた「冬の顔」で記者を迎えてくれた。隣で共に湯を楽しんだ遠藤さんは「新緑、夏など四季折々で風景は変わります。それも魅力の一つですね」と教えてくれた。季節が変われば虫の声も聞こえるだろう。夜の星空の美しさも想像に難くない。大自然を強く感じながら入る温泉は格別だ。風呂上がりに自分の肌に触れると、いつも以上にしっとりしているように感じた。
温泉はコテージやキャンプでの利用者の楽しみの一つ。近年のアウトドアブームの高まりでウインターキャンプでの利用も増加傾向にある。遠藤さんは「ここには、キャンプに加えて温泉という付加価値がある。利用者も魅力に感じてもらえているのではないか」と話した。
また、午後9時まで営業という利便性の高さから、キャンプ利用者だけでなく、ファミリー層はもちろん、仕事終わりのサラリーマンなども足を運ぶという。
東日本大震災ではコテージや温泉に被害はなく、被災者の受け入れや、復興支援の一環で温泉の無料開放にも尽力した。利用者は震災で一時落ち込んだが、現在は震災前を超える利用者が訪れているという。
非日常のように感じる自然あふれる空間の中、湯につかり過ごすひとときが、とてもぜいたくに感じた。
【メモ】フォレストパークあだたら=大玉村玉井字長久保68。日帰り入浴は税込みで大人798円、小、中学生324円、就学前は無料。正午~午後9時。第1、第3火曜日が休館。
≫≫≫ ほっとひと息・湯のまちの愉しみ方 ≪≪≪
【地場産品そろう村の玄関口】国道4号沿いに店を構える大玉村のあだたらの里直売所は、新鮮な野菜やコメ、加工品などを販売、村内外からの来場者でにぎわう村の"玄関口"だ。1月下旬には、約2カ月を残して年度売り上げ2億円を初めて突破した。一昨年末の改装で売り場面積も拡大し、店頭に並ぶ品数も増えている。店舗前のふれあい広場で毎週末のように行われるイベントも好評で、集客に一役買っている。営業時間は午前8時30分~午後5時。
〔写真〕大玉村の"玄関口"としてにぎわうあだたらの里直売所
- 【 川内村・かわうちの湯 】 魅力増し...よみがえる 非日常感を演出
- 【 二本松市・岳温泉 】 山を遊び尽くす拠点 新風を吹き込む温泉宿
- 【 福島市・飯坂温泉 】 豊富な湯量!疲れ癒やす 数寄屋造りの湯宿
- 【 猪苗代町・横向温泉 】 時間忘れいつまでも 心地いい『ぬるさ』
- 【 三島町・宮下温泉 】 旅館と客を超えた『絆』 湯船から二つの川
- 【 下郷町・湯野上温泉 】 大河の美...極上の時間 自然の音楽を堪能
- 【 西会津町・ロータスイン 】 心躍る身近な非日常 自分へのご褒美
- 【 石川町・母畑温泉 】 ホッとする『大切な時間』 空間に気品漂う
- 【 いわき市・田村屋旅館 】 3組限定!至福の時間 家族で守る伝統
- 【 西郷村・新甲子温泉 】 やわらか~く包む温泉 雄大な景色も魅力