強制収容所を移築/将来への教訓伝える拠点
米カリフォルニア州ロサンゼルスの日本人町・小東京(リトル・トーキョー)。日本食レストランや日系ホテル、土産物店などが並ぶ街路を歩いていくと、歴史的な仏教建築の旧西本願寺羅府分院と、ガラス張りの近代的建物が並ぶ一角に着く。この2つの建物が「全米日系人博物館」。旧西本願寺羅府を本館、ガラス張りの建物を新館とし、全米最大にして世界最大の日系アメリカ人の文化と歴史を伝える拠点として、毎日のように多くの観光客や学習者、研究者を受け入れ、年間の来館者は10万人を数える。
1985(昭和60)年に日系人の有志や企業などを中心に建立運動が始まり、92年に民間の非営利団体として活動をスタートさせた。99年には、スミソニアン航空宇宙博物館の設計でも知られる日系人ギョウ・オバタが設計したガラス張りの新館が完成した。
全米日系人博物館の展示物でひときわ目をひくのは、新館内に再現された強制収容所。戦後残っていたワイオミング州のハート・マウンテン強制収容所の実物の一部を同博物館内に移築した。柱は細く、柱と柱の間に薄い板を打ち付けただけの壁。住み慣れた地域を離れて、強制的に収容された当時の日系人の生活の厳しさをうかがわせる。
館内には、各収容所別の記帳用ノートが置かれている。強制収容所で過ごした人が来館すると、当時の思い出や出来事を手書きのメッセージとして残している。「友情を築いた地」「二度と戦争は起きてほしくない」「誇りを持って生きて」など、平和への思いがつづられている。
同博物館マネジャーで広報担当の渡辺美津重は「博物館は多くの人の手で完成され、運営されている。貴重な日系人の歴史と文化を後世に伝えたい」と語る。
館内にはこのほか、日系人が収容所に送られる際に身の回りのものを詰めて持ってきた大きなトランクがモニュメントのように山積みされ展示されているのをはじめ、日系人に関するフィルム15万フィートや写真4万枚、衣類、手紙、絵など多数の資料が公開されている。
同博物館は研究者や市民のために、第2次世界大戦で戦った日系兵士1万5000人のデータベースにアクセスできるサービスを提供したり、強制収容所時代の個人の記録などを調べることができる。北米の日系人のルーツを伝え、分析し、将来への教訓を与える巨大なシンクタンクになっている。(参考資料、同博物館のホームページhttp://www.janm.org/、同博物館発行「日系アメリカ人の歴史−アメリカに渡った日系人の歩み」)(敬称略)
(報道部・藍原寛子)
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