白虎隊の踊り指導/日系人、はかま姿で練習
米ロサンゼルス郊外の小ホールいっぱいに「吉田松陰」「黒田節」などの民謡が響く。はかま姿で腰に模造刀を差した現地の日系人たちが、真剣な表情で創作舞踊の練習を始めた。メンバーは、ロサンゼルスの各県人会の集まりや南カリフォルニア福島県人会(南加県人会)の会合で踊りを披露している。1番の人気は、戊辰戦争の悲劇を表現した「白虎隊」だ。
今から10数年前、星峰男(下郷町出身、現南加県人会長)と妻節子ら4人が白虎隊の踊りを始めた。その後、日米劇場などで踊りを披露している創作舞踊の井上量子(若宮流若宮翠寿稜、北海道出身)が現地の愛好者を指導している。「切腹の場面では日本を知らない日系三世に『どうして自分の体を刀で刺さなければならないの』『刀を振り回すのはなぜ』と聞かれる。踊りより先に日本の文化や歴史を教えなければならなかった」と井上。
米同時多発テロが起きた2001(平成13)年9月、井上らは会津若松市で踊りを奉納するために来日を計画していた。2グループに分かれて来日する予定だったが、最初のグループが米国を発った後でテロが発生。来日できた日系二世のキャシー・マトバら3人だけで踊りを披露した。
この年は全米で暴力追放が盛り上がった時期だった。白虎隊の踊りを練習していた高校生が「白虎隊の踊りを披露したい」と学校に模造刀を持っていこうとしたところ、「危険だから」と持ち込みが禁止され、扇子を代用して踊った。
着物も帯も米国では高額で、手軽に始めたいというのは無理な状況。しかし「踊りも内容も毎年工夫して、踊る側も見る側も飽きないように工夫している。ヒップホップやジャズなど、動きが激しい踊りが好まれる米国で、若い人たちが日本の踊りに興味を持ってくれるのはうれしい」と井上は笑顔で話す。
マトバは「サムライの映画を見て日本の踊りに関心を持った。両親に話したら『面白そうだね』と言ってくれた」。
井上は「全員がボランティアで踊っており、お客さんの拍手だけがご褒美。『本物の白虎隊じゃない』と言われて悲しい思いをすることもあったが、日本を知らない日系人が踊ることで、日本文化への理解が少しでも広がれば」と期待する。日本文化を伝える地道な活動が続いている。(敬称略)
=シリーズ「南カリフォルニア移民の軌跡 波涛の向こうに」おわり
(報道部・藍原寛子)
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