【平成18年】県発注工事談合、汚職事件 佐藤栄佐久知事逮捕...県政混乱

 
自家用車の後部座席に乗り込み、自宅を出る佐藤元知事。この後、東京地検特捜部に逮捕された=2006年10月23日

 県発注工事を巡る談合、汚職事件に揺れた2006(平成18)年。東京地検特捜部が収賄の疑いで、知事として5期18年にわたって県政を担った佐藤栄佐久氏を逮捕した。

 一連の事件では、県政官財の暗部が浮き彫りとなった。談合事件では県の幹部経験者や財界からも逮捕者が出た。県議を含む佐藤氏の秘書経験者などが知事選に絡み、買収を行っていたとして公選法違反で起訴され、有罪判決を受けた。

 事件が表面化したのは7月。佐藤氏の親族方の家宅捜索だった。特捜部は佐藤氏が役員を務めていた親族会社の土地を三重県の建設会社が買い取ったのが収賄に当たるとみて捜査を展開した。

 この建設会社は県内のダム工事の受注を狙っていた準大手ゼネコンから多くの下請け工事を受注するなどしていた。佐藤氏はダム工事で準大手ゼネコンを受注業者として県幹部に示唆した疑いがあるとされた。

 9月に入り、佐藤氏の秘書を自称していた男性が県の下水道工事を巡る談合の疑いで逮捕された。三重県の建設会社が親族を通じて佐藤氏にJヴィレッジ整備を持ちかけようとしたことなどが判明し、佐藤氏も事実と認めるなどして県政は混乱の度を増した。談合の疑いで親族が逮捕された翌日に開会した県議会が対決姿勢を鮮明にしたこともあり、佐藤氏は知事辞任に追い込まれた。

 事件がヤマ場を迎えたのは10月。報道陣が待ち構える中、特捜部が県庁に捜索に入るなど混乱が続いた。佐藤氏の逮捕は23日。特捜部からの出頭要請で上京し、そのまま逮捕された。

 佐藤氏は逮捕時、ダム工事の受注業者を示唆したとの容疑を一時認めた。しかし釈放後は一転し、関係者の事情聴取などを避けようとうその自白をしたと主張。逮捕の翌年、東京地裁で始まった公判では起訴内容を全面否認。無罪を訴えたが、起訴内容を認めた調書が決め手となり執行猶予付きの有罪判決を受けた。

 控訴した東京高裁でも有罪。最高裁まで争い、12年に有罪が確定した。佐藤氏は有罪確定後も自身の潔白を訴えている。
 佐藤氏の辞任に伴って10月に告示された「出直し知事選」には5人が立候補し、参院議員を辞して立候補した佐藤雄平氏が初当選した。

 事件は公共事業が激減しても建設業者が減らない過当競争の中で談合が相次いだ点に焦点を当てることになり、入札制度改革のきっかけにもなった。

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 県発注工事談合、汚職事件 確定判決によると、佐藤栄佐久元知事らは共謀して2002(平成14)年8月、木戸ダム(楢葉町)の本体工事を受注した前田建設工業側に、受注謝礼として親族が経営する郡山三東スーツ社の土地を約8億7000万円で買い取らせ、土地売却による「換金の利益」を得た。佐藤元知事は潔白を訴え、自身の無実などを記した著書「知事抹殺」を出版するなどしている。

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 【平成18年の出来事】
1月・平成の大合併で伊達、南相馬、喜多方3市が誕生
10月・県発注工事に絡む談合・汚職事件で佐藤栄佐久元知事逮捕
  ・高校生の未履修問題が発覚
11月・出直し知事選で佐藤雄平氏が当選

 〔国内〕▼第1次安倍政権が発足▼ホリエモンらヒルズ族逮捕▼秋篠宮家に悠仁さま誕生▼トリノ冬季五輪で荒川静香選手が金メダル
 〔流行語〕「イナバウアー」「格差社会」「ハンカチ王子」
 ヒット曲〕湘南乃風『純恋歌』TOKIO『宙船(そらふね)』絢香『三日月』