【平成22年】猪苗代湖、水質日本一奪還へ 輝く湖取り戻すボランティア

 
猪苗代湖松橋浜で水質汚濁の状況をみる中村さん

 猪苗代湖北部に位置する松橋浜。ヒシなどの水生植物が枯れて腐った有機物が漂着し、湖岸に黒々と堆積している。水深の浅い湖北部に多くあり、放置すれば腐食して水質汚濁の原因の一つとなってしまう水草などを回収し、かつて日本一きれいだと評された同湖の水質をもう一度取り戻そうという県民参加の取り組みが2010(平成22)年、本格的に始まった。

 猪苗代湖の水質は、もともと日本の湖の上位に何度も入るなど定評があり、02~05年度までの4年間は環境省から水質日本一の評価を受けた。しかし、06年度以降は、大腸菌群数が基準値を超えることが多くなるなど、水質汚濁が顕在化し、ランク外が続くことになる。

 このことに危機感を覚え、水質悪化に歯止めをかけようと始まったのが漂着水草の回収だ。10年以降、毎年9月下旬から11月上旬の毎週末に活動。昨年度までに延べ1万5000人近くのボランティアが参加し、回収した水草は約650トンに上る。

 中心になって活動してきたNPO法人「輝く猪苗代湖をつくる県民会議」理事長の中村玄正(みちまさ)さん(77)=日大名誉教授=は「(水質汚濁を)何とかしたい、という純粋な思いから始まった活動だったが、本当に多くの方がボランティアとして取り組んでくれて、猪苗代湖に対する関心の高さや、自分たちの手で日本一を取り戻そうという県民の思いの強さを知った。年々、やればやるほど真剣味が増していった」と振り返る。

 活動開始から約10年、新たな時代を迎えるにあたり、この活動も次の段階に進みつつある。「ボランティアだけに頼る今の組織では限りがある。次のビジョンに力を入れていくことが大切だ」と中村さん。水草回収など汚濁原因の解消のための活動を少しずつでも毎日、恒常的に続けられるような組織やシステムをつくる必要性を提唱する。

 猪苗代湖は県民に「古里福島」を思い起こさせる「母なる湖」だ。水質日本一奪還の夢を描く県民の思いから始まった水質保全の取り組みを新たな時代で発展させていくため、中村さんの挑戦は続く。「組織があればより多くの人の理解や協力を得られるようになる。ただ、組織や決まりごとだけで実践が伴わなずに『形だけ』になってはいけない」

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 猪苗代湖 会津若松、郡山、猪苗代の3市町にまたがる日本で4番目に広い湖。2005(平成17)年度まで4年間は日本一きれいな水質を誇った。その後はランク外が続いたが、17年度の湖沼の全国水質ランキング8位となり、9年ぶりにランクインした。

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 【平成22年の出来事】
6月・県内でも子ども手当支給開始
8月・夏の甲子園で聖光学院が強豪撃破しベスト8
9月・東京電力福島第1原発3号機のプルサーマル計画受け入れ

 〔国内〕▼尖閣諸島で中国漁船が巡視船に衝突▼観測史上最高の猛暑▼厚生労働省元局長に無罪判決。特捜検事らを逮捕
 〔流行語〕「ゲゲゲの」「女子会」「食べるラー油」
 〔ヒット曲〕AKB48『ヘビーローテーション』嵐『Monster』いきものがかり『ありがとう』