 |
| 高原地帯に広がる静かな温泉郷・中ノ沢温泉。古くから湯治場として親しまれ、観光客でにぎわいを見せる |
|
中山義秀が、最初の妻赤田トシ(敏)を見初めたのは、大正8年8月、猪苗代町の中ノ沢温泉においてであった。早稲田予科2年生で、夏休みを利用して独りで滞在していたのだ。
義秀はまだ19歳。1歳下のトシに一目惚ぼれし、思い余って彼女の住む坂下町まで追いかけて行った。純情な一途いちずさに心動かされたこともあって、彼女もまた義秀を慕うようになり、翌年4月、娘の身一つで上京し、2人は結ばれたのである。
作家として認知されるまでに時間がかかった義秀は、三重県や茨城県の中学で教えを執ったが、それはあくまでも妻子を養うためであった。
|