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ドナーと家族 16(2006.06.16)
朝子さんの思い出を語るフラミンハム・ステート・カレッジ留学生担当フリンターさん。現在も間沢さん一家と交流し、支援し続けている=ボストン郊外の同カレッジ、今年2月

苦い思い出残し帰国/親身に一家気遣う人も
  間沢さん一家が病室に戻り、医師に提供の意思を伝えると、臓器調達機関(OPO=ニューイングランド・オーガンバンク)のドナー・コーディネーター、スーザン・ヴァイスガーバーさんが静かに語りかけた。「朝子さんの病歴など立ち入ったことを伺いますが、嫌なら断って構いません」。控えめな声だった。
 押しつけがましいものはなく、間沢さんは一つ一つの説明に納得して手続きを進めた。コーディネーターは最後まで朝子さんの免許証やドナーカードの提示を求めることはなく、心臓、肝臓、肺と腎臓は6人の患者に移植された。
悲しみの中救われる思い
 医師は3人にホテルに泊まるよう勧めた。「朝子が1人になってしまう」とためらう3人に医師は言った。「私たちは朝子さんを決して1人にはしません」。洋一さんは悲しみのなかでも救われる思いがした。
 翌日、3人は事故原因を知るため現地ウエストウッド警察署を訪ねた。状況はこうだ。朝子さんはホームステイ先の男性(ホスト・ファザー)のバイク後部座席に乗り外出した。緩い右カーブでバイクが転倒、朝子さんは投げ出され、ホスト・ファザーは即死だった。
警察で悲しみと怒り爆発
 警察では一緒にツーリングしていた友人夫妻に偶然会い、洋一さんは悲しみと怒りを爆発させた。ホスト・ファザーのバイクの事故−。彼も死亡し、原因も不明、つらいことばかりだった。
 その後も葬儀や退学手続きなど次々に出来事が押し寄せた。訴訟大国・米国を象徴するように「バイクやヘルメットの会社を訴えるべきだ」というアドバイス。葬儀屋からは考えられない高額の見積もりが届くが、ホスト・ファザーは200万円程度の保険にしか入っていなかったことも判明。早口の英語を聞くのも嫌になっていた。
 そんな中でも親身に一家を気遣う人々がいた。フラミンハム・ステート・カレッジの留学生担当理事マーサ・フリンターさんは「夏休み明けには朝子のことを学生に話します。何か追悼をしたい」と告げた。OPOのドナーファミリーサービス担当パメラ・アルバートさんは「あなたたちは日本に帰ってしまうから心配よ」と語った。外務省に事故の一報を伝えたボストン子ども病院の臨床検査部主任技師坂本雅是さんも「朝子さんは日本人の誇りです」と一家を励ました。
 しかし「すべてが終わった。こんな国には二度と来ない」。苦しい思いだけを残し、3人は帰国の途についた。
 
 


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