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ドナーと家族 18(2006.06.18)
スイスに家族旅行に行った時のニコラス君(ニコラス・グリーン基金提供)

7歳少年が臓器提供/欧米で「ニコラス現象」に
  「ある夜、ベッドに歩いて行ったらニコラスの声が聞こえてきた。少し疲れていたけど、あれは間違いない、ニコラスの声だった」。米国ロサンゼルスで、元新聞記者レグ・グリーンさん(76)は亡きわが子を思い、懐かしく寂しげな表情を浮かべた。
旅行中、強盗に襲われる
 米国在住のグリーンさん一家は南イタリアを家族旅行中、高速道路で強盗に襲われた。車の後部座席で寝ていたニコラス君は、強盗犯が撃った拳銃の弾を頭に受けて脳死となった。今から12年前の1994年、まだ7歳の少年だった。
 グリーンさんと妻マギーさんは4歳のエレノアちゃんとともに、ニコラス君が運ばれた病院の医師から病状の説明を聞いた。
 医師は最初に「悪いお知らせです」と前置きし、「脳死状態に陥っています」と説明した。今は人工呼吸器を付けて息をしているが自力ではなく、脳全体の機能が失われた状態で回復の可能性はほとんどないこと、脳幹に弾丸が止まったままで取り出せないこと。さらに医師はCTスキャンの結果を示し、「脳が活動している様子がない」と死亡宣告した。
 「病室でニコラスを最初に見た時、脳は既に機能していなかった。脳が死んでしまえばニコラスではなかった。助ける手だてはなく、私たちは脳死を受け入れた」とグリーンさんは振り返る。
 その後、夫妻はどちらからともなく「ニコラスは死んでしまった。臓器を提供しよう」と決断、提供と摘出の書類にサインした。心臓、肝臓、膵臓(すいぞう)、腎臓と角膜がイタリアの7人の患者に移植された。
 わずか7歳の少年が強盗に襲われて脳死に陥り、臓器提供をしてくれた。ニュースはイタリアをはじめ欧米中を駆け抜けた。イタリア大統領は哀悼の意を表し、夫妻にメダルを贈った。世界各地からグリーンさんに手紙が寄せられ、ドナーカードを持つ人が急増した。この動きはのちに「ニコラス現象」と名付けられた。
イタリア訪れ患者に会う
 事件から数週間後、銃撃容疑者が逮捕された。その数カ月後、一家は再びイタリアに渡り、テレビ局や関係者の手配でニコラス君の臓器を移植した患者に会った。グリーンさん一家とニコラス君の臓器提供は、個人の決断を離れ、社会的な意味を持ち始めていた。
 
 


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