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移植医療の現場 |
|23|(2006.08.16)
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| 赤ちゃんの手術に臨む加藤医師。両親は手術前に直通番号を知らされており、手術中の好きな時に電話がかけられる。手術中も両親の問い合わせに答えるのも加藤医師の重要な仕事だ |
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完ぺきを目指す医師/手術室で常に孤独な決断
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「ボビー(電気メス)」「フォーセプス(ピンセット)」。マイアミ大ジャクソン記念病院の70番手術室に加藤友朗(ともあき)医師(42)の落ち着いた声が響く。右手の人さし指は、はさみの形をした持針器(じしんき)を動かすたびに、第一関節から15度ほど甲側に反り返る。指先の自在さと柔らかさ、豊富な経験が伝わってくる。
加藤医師は年間400件を超す手術を行う世界屈指の移植センター、マイアミ大移植外科の准教授で、肝・小腸プログラムの中の小児移植外科部長を務める。年間平均60件を超す子どもの肝、小腸、そして多臓器移植手術を行う。日本人初の6臓器移植者の大橋陽佑ちゃん(2つ)と、5臓器移植の神達彩花ちゃん(5月に死去)の手術も執刀した。
赤ちゃんの血管は細く、6臓器は大人の両手に収まる大きさだ。1ミリ単位の感覚で血管や臓器を縫い合わせる作業が続くが、加藤医師の手元では、針とピンセットの先がほとんどぶれない。出血点と止血点を確実に見極めて吻合(ふんごう)するため、手術時間が短く、患者へのダメージが少ないという外科医として最高の手技を備えている。
加藤医師がよく口にする言葉がある。「パーフェクト・ドライ」。完ぺきを目指す。完全に止血する。この言葉には外科医としての目標が込められている。
米国の外科医はよく「完ぺきを目指せば、逆にうまくいかなくなる」と言う。しかし加藤医師には異論がある。移植では、医者に納得のいかない点がわずかでもあると患者の生死にかかわる。だから最後まで完ぺきを目指さなければならない、と。
皮膚の切開から内臓の摘出、提供者の臓器の移植と縫合。この間、状況は刻々と変化し、臨機応変さと決断力が求められる局面が続く。特に終盤は要注意だ。
「完ぺきを目指していても、長いオペ(手術)では難しい場面が必ず出る。知識や技術不足、あるいは自分の力を上回る難しい症例かもしれない。外科医としての資質は、この『うまくいかない』場面で試される」
続けるのか、やめるのか。別の医師に応援を頼むのか、自分でやり直すのか。
上司の言葉を反すう
そんな時加藤医師は、最も信頼する上司で世界最多の移植手術経験がある医師の1人、アンドレアス・ツザキス教授の言葉を反すうする。「どんなに信頼し、長く働いてきた仲間でも、聞けばほとんどが『やり直すな』と言う。結局自分自身で決断するしかない」。手術室で移植外科医は、常に孤独な決断を迫られている。
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