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移植医療の現場 38(2006.09.02)
贈られたイレリアムの写真を胸に(左から)リーバス、加藤両医師、母マイレッリと祖父母=ベネズエラの首都カラカス

手術を目前にし死亡/ドナー確保に地道な活動
  ベネズエラのバレンシア生まれ、1歳半の女の子イレリアム・エリザベスちゃん。2004年12月、同国内で初めて生体肝臓移植手術を予定しながらも、直前で状態が悪化し、帰らぬ人となってしまった赤ちゃんだ。
 イレリアムを執刀する予定だったマイアミ大の加藤友朗医師が、移植手術のため同国の首都カラカスを訪問中の2月、イレリアムちゃんの母マイレッリさんと祖父母は、病院に加藤医師らを訪ねた。整備が進まない悪路を2時間飛ばして駆け付けた。
 「イレリアムが移植第一例になるべきだったのです」。加藤医師が静かに語り始めると、マイレッリさんと祖父母の目にみるみる涙が浮かんだ。「何て言ったらいいのかしら。あの子のことを思うと―」。全員の目に涙があふれ、全員が何も言わず抱き合った。
 原因不明の肝臓病のわが子を何とかして救いたいと、マイアミに住む親せきを通じて、マイアミ大の移植外科チームに連絡を取った。「カラカスで生体肝移植を受けられるかもしれない」と希望を持った矢先、イレリアムちゃんは容体が急変して亡くなった。 
 「『イレリアム』とは、私の名前マイレッリを反対につづった名前。自分の名前を書いて遊ぶようにもなっていたのに―」。マイレッリさんは亡きわが子を思い出して寂しくほほ笑んだ。すると祖母は「先生にプレゼントです」とイレリアムの写真を取り出した。「イレリアム・エリザベス。母マイレッリ・ロドリゲス。加藤先生へ。私たちのすべての感謝の思いを込めて。私たちの天使イレリアム」。マイレッリはそう写真の裏に書き、加藤医師に手渡した。
 ベネズエラでも脳死臓器提供者(ドナー)数はまだ少なく、ドナーが現れるのを待つ間に状態が悪化して亡くなる子どもがいる。カトリック信者が国民の95%以上を占めるため、「臓器移植に強い反対は少ない。啓発活動次第で、国民の理解は得られる」とペドロ・リーバス医師。各病院での適切な脳死判定の実施と、病院から臓器あっせん機関ONTVへの迅速な連絡、家族が理解し納得した上での臓器提供の同意と摘出、一般市民の移植医療への理解推進。地道な活動が続く。
加藤医師に電子メール
 数週間後、マイレッリさんから加藤医師のもとに電子メールが届いた。「イレリアムは移植を受けられなかったけれど、ほかの子どもが移植で助かるのなら、それは私たち家族とイレリアムの勝利です。これからも多くの子どもを救ってください。イレリアムの母マイレッリ」
 
 


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