連載 ホーム 県内ニュース スポーツ 社説 イベント 観光 グルメ 健康・医療 購読申込  
 
 
第4部TOPへ
TOP 第1部 第2部 第3部 第4部

臓器獲得機関OPO 41(2006.11.29)
ドナーになる可能性のある患者が現れた場合に連絡を受けるOPOのドナー・デスク。正面の巨大パネルに情報が掲示される=ペンシルベニア州  

病院からドナー情報/家族の「決断」の時迫る
 昨年10月31日、米国民の祝祭日ハロウィーン。お化けの仮装をした子どもたちが各家庭を訪問してお菓子をもらう。そんな楽しい日、米国東海岸のペンシルベニア州でハロウィーンにまつわる悲劇が起きた。
ハロウィーンでの悲劇
 この日の午後、あるレストランの前で10代半ばの子ども数人が生卵投げをして遊んでいた。生卵投げは、ハロウィーンの悪い遊びの1つだ。しかし店のガラスやドアが生卵で汚れるのを見た21歳のレストラン店員トム(仮名)は、外の子どもたちに向かって「やめろ」と怒鳴った。それでも子どもたちはやめず、ちょっとしたトラブルになった。外が静かになったところでトムが様子を見に店の外に出ると、先ほどの子どもの1人が自宅から拳銃を持ち出し、トムの背後から至近距離で引き金を引いた。トムは意識不明の重体に陥り、病院の脳神経外科集中治療室(NSICU)に運ばれた。銃社会が招いた悲劇だった。
 弾丸は脳内に止まり、午後3時、NSICUの医師らが、脳幹を含めたすべての脳の働きが止まって脳機能が戻ることのない「脳死」と診断。病院に駆け付けた母親と妹に脳死を宣告した。
 NSICUの看護師は地元のOPOに連絡を入れた。リクワイアード・リクエスト法などの法律やJCAHO(ジョイント・コミッション=病院の質や患者プライバシー保護を監視する第3者機関)の基準、OPOと病院の契約などで、臓器提供者(ドナー)となり得る可能性のあるすべての患者や脳死者について、病院はOPOに連絡するよう決められているためだ。
 連絡を受けたOPOのドナー・コーディネーターのジーナ(仮名)はすぐさま病院に駆け付けた。
臓器提供か、それとも…
 米国では、医師2人が一定の間隔を置いていずれも脳死と判定した場合、患者の死亡が宣告される。現実的にはその瞬間から健康保険が使えなくなる。これから人工呼吸器を外して遺体を引き取るか、研究や医学教育のために献体するか。あるいは莫大(ばくだい)な費用を全額自己負担して人工呼吸器を付けたままにするか。さらには臓器提供に同意し、摘出手術までの数時間、人工呼吸器を装着したままにするか。家族の重い決断の時が迫っていた。
 トムは静かにベッドに横たわっている。枕に血液がにじんでいなければ、銃撃の被害者だとは分からない。黒いコウモリやオレンジ色のカボチャの飾りが張られたナース・ステーションの片隅で、ジーナは静かに書類の準備に入っていた。
 
 


〒960-8648 福島県福島市柳町4の29
ネットワーク上の著作権(日本新聞協会)
国内外のニュースは共同通信社の配信を受けています。

このサイトに記載された記事及び画像の無断転載を禁じます。copyright(c)  THE FUKUSHIMA MINYU SHIMBUN