『医療危機 ’09ふくしまの現場から』TOP
 小児心臓病
【3】―2009.01.05
小児心臓病
心臓病の子どもを守る会のクリスマス会で、ケーキ作りを楽しむ高萩龍平君(左)。会員らに元気な巣SGATAを見せた=昨年11月30日、郡山市喜久田ふれあいセンター
■病院勤務医 

 厚生労働省によると本県人口10万人当たりの病院勤務医数は全国で38番目。県は勤務医確保に向け緊急プログラムを今月中にも取りまとめる方針。プログラムには、不足著しい診療科の医師の処遇改善策などが盛り込まれる見込み。
第1部
医師と患者
 
― 「患者の信頼が支え」 
 
 「手術をして元気になりました」。昨年11月、郡山市で開かれた「県心臓病の子どもを守る会」のクリスマス会。福島市の高萩龍平君(8つ)は少し照れくさそうに壇上で発表した。同8月、福島医大付属病院心臓血管外科の若松大樹医師(35)の手術を受けた。3カ月が経過、元気に運動もできるようになった。
 若松医師とともに小児心臓病(先天性心疾患)の治療に当たる同病院小児科の桃井伸緒医師(48)は度々、同会のイベントや勉強会に参加してきた。病院でできないざっくばらんな話をするためだ。「診察したとき赤ん坊だった子が大きくなったのも見られる」
 小児心臓病の手術を行うのは、県内では同病院とほかに一カ所のみ。桃井医師と若松医師の元には県内全域から患者が集まる。同会の茂木好子会長(54)は両医師が多忙なのが気に掛かる。「疲れた顔をしている。手術後の子どもの精神的ケアも必要と思うが、現状では頼めない」
 多忙に拍車を掛ける医師不足について、若松医師は診療科ごとの医師数の不均衡を指摘する。「心臓血管外科医は少ないのが現状。訴訟を起こされると大変と、学生は考えるのだろう」。
 成人に比べ、子どもは合併症を乗り越える力が弱く、手術では約5%が助からない。ただ若松医師は、患者が合併症で亡くなった際、両親に恨み言を言われたことはない。合併症の可能性を手術前に伝えることで、両親もある程度覚悟するためだ。それだけに「信頼関係は何より大事」と強調する。
 「医師がやるべきことをやらないで、訴訟になるのはしょうがない。ただ中にはそうでない場合もあるようだ」。報道などで聞く医療訴訟を気に掛けつつ、週1回の手術を続ける。
 訴訟に限らず、患者の権利意識の高まりなど、医師と患者の関係は近年、変化した。「医療一般への患者の不信感は大きい時代」と、患者と固い信頼関係を築いている桃井医師も認め、後進の意欲の低下を心配する。「若いころはすごく忙しかったが、患者の厚い信頼が支えだった。若い医者のためにも状況が変わればいいと思う」
 


〒960-8648 福島県福島市柳町4の29

個人情報の取り扱いについてリンクの設定について著作権について

国内外のニュースは共同通信社の配信を受けています。

このサイトに記載された記事及び画像の無断転載を禁じます。copyright(c) THE FUKUSHIMA MINYU SHIMBUN