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 時間外診療
【6】―2009.01.09
時間外診療
いわき市立総合磐城共立病院の救命救急センター。夜間外来は子どもの姿が目だった=昨年12月7日午後8時ごろ
■コンビニ受診

 「子どもが擦りむいた」など軽い症状で時間外に受診したり、「仕事で昼間来られない」など自己都合を理由にした時間外受診を指す。医師の激務を助長、勤務医の病院離れにつながるとされ解消に向け活動している住民団体もある。
第1部
医師と患者
 
― 込む病院、母親は葛藤 
 
 いわき市立総合磐城共立病院の救命救急センター。昨年12月17日午後8時、外来患者が訪れる初期・二次救急医療ゾーンの待合室には多くの患者がいた。診察室からは子どもの泣き声。夜が更けるにつれ患者はまばらになったが、翌日午前1時45分、同3時45分、同6時35分。ほおを真っ赤にした幼児を抱いた母親が断続的に診察に訪れる。
 同病院で時間外に診療を受けた患者のうち、症状が軽く帰宅した人の割合は、過去5年間の平均で約86.6%。「勤務医の病院離れにつながりかねない状況で、まさに非常事態の一歩手前」だ。同市は7月、「コンビニ受診」を控えるよう市民に呼び掛けたが、病院によるとその後も状況は変わらない。「一般の人と病院側との感覚にずれがある。医師の現状が市民に伝わっていないのかも」と同病院医師。
 須賀川市も同様にコンビニ受診に危機感を抱く。同市の公立岩瀬病院は当直医の過剰な負担を減らそうと昨年3月から夜間外来を午後11時までに制限、深夜の受け入れは救急搬送のみとし、市民に理解を求めた。
 時間外診療の大多数を占める患者は子ども。同市の主婦金沢友美さん(37)は小児科医の多忙さは理解しているが、子どもが夜中に発熱した際、ひどく迷ったのを覚えている。「核家族なので身近に相談する人がおらず、育児書やインターネットで情報を集めていると不安が増してくる。(病院に行くべきかどうか)葛藤(かっとう)はすごい」と心情を吐露。医師の多忙が原因で時間外診療が制限される悪循環には不安を感じている。
 そんな母親の思いに、磐城共立病院の男性小児科医(51)は「母親が不安に思って病院に駆け込むのはやむを得ない」と理解を示す。その上で、症状の軽重をある程度判断するための患者教育の必要性を訴える。一方「わざわざ夜を狙って訪れる人も中にはいる」とも指摘。「そういう人にはペナルティーがあっても良い」
 適正利用を促せればと、同病院は4月から、時間外診療の患者から「特別料金」を徴収する方針だ。
 


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