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 病院の存続
【7】―2009.01.10
病院の存続
会場に詰め掛けた住民ら。地域医療への関心の高さをうかがわせた=昨年12月7日、南相馬市小高区・浮舟文化会館
非常事態宣言 

 南相馬市は昨年6月、総合、小高の市立2病院の診療体制の維持が危機的状況にあるとして、医師の待遇改善に向け市民に理解を求める「非常事態宣言」を出した。市は小高病院を存続させる方針だが、春には常勤医が2人になる可能性がある。
第1部
医師と患者
 
― 「小高から始めよう」  ―
 
  昨年12月7日午後6時。家族団らんの時間にもかかわらず、南相馬市小高区の浮舟文化会館のホールはすぐに満員になった。ホール内の通路にパイプいすが並べられ、通常の収容数の1.5倍にあたる約450人が開会を待った。
 「小高病院を守る会」の発足を記念したフォーラムが始まった。「病院がないと嫁も来ない。ますます過疎化する」。同会の山沢征代表(65)が気勢を上げ、来場者が拍手で応じた。同病院の遠藤清次院長(51)は満員の会場を見渡し「この光景が1つの答え」と、住民の高い関心を喜んだ。
 同会が発足したのは昨年11月。常勤医が3人という深刻な医師不足で診療体制の維持も危ぶまれる危機的状況の中、小高区の住民で結成した。病院存続のため、住民に何ができるか考えるためだ。存続を求める署名も同市に提出した。山沢代表は「1人でも2人でもお医者さんに来てもらいたい」と言葉をつないだ。
 しかし具体的に何をすればよいのか。質疑応答の際、会場の男性は尋ねた。「どうすれば守れるのか。みんなで病院にかかれば、先生を忙しくしてしまうだけだし…」。同会の高野逸夫事務局長(66)は「まずは現状を知ってもらうこと。具体的な活動はこれから」と静かに話す。
 現時点で、高野事務局長がモデルケースと考えているのは、兵庫県丹波市の「県立柏原(かいばら)病院の小児科を守る会」の活動だ。同会は(1)コンビニ受診を控える(2)かかりつけ医を持つ(3)医師に感謝の気持ちを伝える―の3つのスローガンを掲げて活動、激務に苦しんでいた小児科医の減少を食い止めたという。高野事務局長は「全国でもそうだと思うが、地域医療への理解が足りなかった。医者が来たくなるような地域を目指す」と意気込む。
 遠藤院長は、地域の医師不足は臨床研修制度などに起因するとしながらも、小高区の医師、患者としてなすべきことがあると訴える。「『何で夜診してくれないんだ』『休みなく働いているのに、どうして理解してくれないんだ』。患者と医師はこんなふうに言い合う間柄ではないはず。互いに力を合わせて地域医療をつくる。小高区から始めたい」
 


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