『医療危機 ’09ふくしまの現場から』TOP
 相互理解
【10】―2009.01.15
相互理解
「医療機関と患者双方の我慢が必要」と語る小山会長
県民の医療への意識 

 県が2006年度に実施した「保健医療に関する県民意識調査」によると、県民が地域医療に望むのは「休日や夜間など救急診療体制の充実」が最も多く、「難しい病気を診てもらえる専門の医療施設の整備」を求める回答などが続いた。
第1部
医師と患者
 
― 医師「双方が我慢を」  ―
 
 医師は患者、県民に何を求めるのか。小山菊雄県医師会長(74)は「コンビニ受診」に言及する。子どもが重症かどうか分からない母親など、患者の言い分にも理解を示すが「誰がみてもたいしたことないケースはある」と問題提起する。「軽症でもタクシー代わりに救急車に乗る患者。その分、重傷者を扱えなくなってしまう」とも付け加える。
 医師不足に直面した医師が激務に苦しむ一方、対する患者側も時間外の受診を控えたり、病院の診療科の減少を許容するなど我慢が必要と小山会長は考える。「痛み分けという言葉がある。医療機関も痛い、県民も痛い。県民に医療機関の激務の苦しみを理解してもらい『これほど大変なら我慢しましょう』とならないと」
 さらに「医師が過労で倒れては病院自体がなくなる。『痛み分け』で乗り切るしかない」と、医師を取り巻く現状への理解を求める。医師と患者の精神的なつながりの重要性も指摘する。「『県民からの感謝の言葉が第一』と考えている医師は多い」
 医師が県民に理解を求めるなら、逆に医師が県民を理解しようとする努力も必要といえる。先天性の股(こ)関節脱臼の治療を長年続けてきた福島市の女性(37)は、これまでさまざまな医師に接してきた。信頼できる医師がすべてではないことを肌で感じている。
 症状が悪化して変形性の股関節症を患ったため、2007(平成19)年秋に県内で手術を受けた。病院には親身になってくれる医師もいたが、執刀医は違った。術前術後の診察で、こちらの顔を見ずにレントゲンだけを見ていたことが強く印象に残っている。「病気は診るけど患者は診ない、という感じだった」。医師と患者について「まずは対等な関係を構築すべきでは」と提言する。
 県内での医師不足の主要な要因とされる医師臨床研修制度の見直しや医師数の増加などに向け政府が改革に着手しても、医師の養成に時間がかかる以上、問題が解消されるのは何年か先の話。現在の状況が続く見通しの中で、医師、患者双方の認識が問われている。
(第一部おわり)
 第一部は、本社報道部の菅野篤司、須田絢一記者が担当しました。
 


〒960-8648 福島県福島市柳町4の29

個人情報の取り扱いについてリンクの設定について著作権について

国内外のニュースは共同通信社の配信を受けています。

このサイトに記載された記事及び画像の無断転載を禁じます。copyright(c) THE FUKUSHIMA MINYU SHIMBUN