『医療危機 ’09ふくしまの現場から』TOP
 飛び込み出産
【4】―2009.03.19

 

本県の妊婦健診未受診 

 県児童家庭課によると2007(平成19)年度、市町村への妊娠届を出産後に出した妊婦が31人いた。同年度の妊娠届け出総数の0.18%に当たる。届け出をしないと妊婦健診の公費負担が受けられないため、未受診である可能性が高い。
第2部
救急医療
 
― 「駆け込み寺」が必要  ―
 
 時として、出産に対する母親の無理解が赤ちゃんの命を脅かす事態が起こりうる。妊婦健診を受けずに出産に臨む、いわゆる「飛び込み出産」だ。
 国立病院機構福島病院(須賀川市)産婦人科の若木優医師(30)は、同病院と公立岩瀬病院(同)で妊婦健診未受診の妊婦を扱ったケースを調査した。1998(平成10)年4月から昨年12月までの11年間で、延べ64人。平均年齢は29.8歳。過去に出産経験のある経産婦が約7割を占め、同様の出産を繰り返す「リピーター」も4人いた。このうち、25%に当たる16人が周産期合併症を発症。通常の出産では考えられない高い割合で、妊婦健診未受診の危険性があらためて浮き彫りになった。
 若木医師は「過去に経験のある妊婦は出産を楽観視している。また、経済的な理由で妊婦健診を受けない人も多い」と指摘する。調査対象の半数に当たる31人について出産費用の支払い状況を調べた結果、10人が未払いだった。
 飛び込み出産のケースでは、危険性が高いと判明しても、その時点では福島医大付属病院(福島市)の総合周産期母子医療センターなど設備の整った施設まで搬送する時間的余裕がない。県内各地域の医療施設で対応するしかないが、費用未払いが多い上、感染症など病院スタッフにも危険が及ぶ可能性があるため、受け入れは敬遠されがちだ。
 福島病院は、飛び込み出産と思われるケースを救急隊が認知すれば、直接、同病院の地域周産期母子医療センターに連絡するよう申し合わせている。須賀川地域で最も設備が整った施設だからだ。同病院の氏家二郎副院長(58)は「飛び込み出産の受け入れは、地域ごとに責任病院を決めるべき」と、「駆け込み寺」の必要性を訴える。
 福島医大で2月、飛び込み出産への対応をめぐり医師や看護師らが意見を交わす研修会が開かれた。出席したある産婦人科医が言った。「親の意識はすぐには変えられない。それでも、赤ちゃんを被害者にしてはいけない」
 


〒960-8648 福島県福島市柳町4の29

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