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 措置入院
【5】―2009.03.20
措置入院など重症患者に対応するあさかホスピタルの救急病床

■精神科救急 

 入院機能を持つ県内の総合病院や精神科病院が(1)県北(2)県中・県南(3)会津・南会津(4)相双・いわきの4ブロックに分かれ、休日・夜間の輪番制度を組んでいる。けがなどの一般救急のシステムとは異なるため、両救急の連携も課題となっている。
第2部
救急医療
 
― 適切な治療の提供  ―
 
 郡山市のあさかホスピタルの精神科救急外来に1人の男性が運び込まれてきた。男性は統合失調症を患い、被害妄想が高まった結果、家族を刃物で刺した。対応した佐久間啓院長(53)は驚きを隠せなかった。「措置入院ではないのか」。
 措置入院は、精神疾患が悪化し自分や他人に危害を加える恐れや、自殺の危険性がある患者に適切な治療を施すための公的な「治療命令」の意味合いが強い入院だ。警察など関係機関から通報を受けた保健所が、専門的知識を持った精神保健指定医2人の診断を経て知事名で決定する。
 運ばれてきた男性は、最初に診断した医師が「必要なし」と判断したため措置入院は適用されず、病状が進み自ら病気であることが分からない状態の患者を、家族の同意を得て入院させる「医療保護」の対象者として搬送されてきた。
 佐久間院長は「本来は他人に危害を加える『恐れ』でも措置入院となる。今回は医師の判断が原因の事例だったが、行政や消防機関の制度理解が足りず、措置入院に至らないケースは少なくない」と語る。措置入院でも医療保護でも治療そのものに大きな違いはないが、佐久間院長は「適切な公的判断ができない状況が問題」と指摘する。
 精神科医療の現場でも医師数は必ずしも充足している状況ではない。精神科診療所が休みとなる休日夜間に措置入院対象となる救急患者が出た際、保健所が2人の精神保健指定医を探すのに時間がかかることもある。一刻も早く患者を引き受けてもらいたい消防や警察から「何とか入院を」と、保健所への通報前に頼まれるケースもあるという。
 佐久間院長は「精神保健指定医の確保が難しい場合には、1人の医師の診断でも措置入院が可能になる『緊急措置入院』の制度もある。診療所で指定医の資格を持つ医師に救急システムに参加してもらうのも制度充実につながる。患者に適切な治療を提供するのは救急の本質」と、措置入院をスムーズに運用できる体制づくりの必要性を語った。
 


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