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 脳梗塞救急
【7】―2009.03.25
脳梗塞救急の地域拠点としての役割を担っている枡記念病院
■血栓溶解療法 

 t−PA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)を投与して血栓を溶かし、血流を回復させる脳梗塞の治療法。薬剤を静脈に注射する方法のほか、極細のカテーテルを使い血栓部分に直接投与する方法がある。出血を誘発する副作用がある。
第2部
救急医療
 
― 寝たきり防ぐ処置  ―
 
 「劇的に良くなった。血栓溶解療法を処置しなければ、寝たきりになっていた症例です」。枡(ます)記念病院(二本松市)の佐藤直樹脳神経外科部長(45)は、脳梗塞(こうそく)で同病院に救急搬送された70代男性の脳血管のCT画像を示しながら言った。処置前、川がせき止められたように血流が止まっていた部分は、処置後の画像では滞りなく流れている。
 がん、心疾患に続き本県の死因の第3位である脳血管疾患。その症例の約6割を占める脳梗塞は、死に至らなくても後遺症から「寝たきり」になることが多い。薬剤で血流を「再開通」させる血栓溶解療法は、脳梗塞救急医療の現場で行われる治療法の一つ。2005(平成17)年に薬剤「t−PA」が認可されて使用が始まり、日常生活に支障ないほど回復するケースもあるという。
 県医療計画などによると、同療法が可能なのは発症後3時間以内で、出血を誘発する副作用もあるため、時間内であっても実施できるケースは限られる。同療法が可能なのは脳梗塞患者の数%とされている。
 「5分遅れると5%、回復の確率が減る。治療が適用できるかどうか、素早く診断することが大事」と佐藤部長。同病院は脳外科医5人と神経外科医1人で24時間受け入れ可能な態勢を維持。現場の救急隊から「重篤な脳梗塞の可能性」との連絡を受けると準備を開始し、救急車到着後すぐCT検査やMRI検査を行い同療法の適否を決める。この間、外来診療をストップすることも。病院搬送後の機動力向上に力を注いできた。
 佐藤部長は、同療法を患者に適用できるケースを増やすために「救急隊に勉強してもらうことも大事」と提言する。同療法を行うことができる病院にすぐ連絡する意識が、救急隊に求められるからだ。
 県によると、県内の各生活圏に同療法を実施する病院がある。「各地区で受け入れ態勢を整えるべき」。佐藤部長は、脳梗塞救急に向けた医療側と消防の連携の必要性を強調した。
 


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