『医療危機 ’09ふくしまの現場から』TOP
 使命感
【1】―2009.07.31
使命感
髄膜腫の手術で、第二助手を務める安藤さん(右)=福島医大付属病院
初期研修、後期研修 

 初期研修(卒後臨床研修)は基本的診療能力の修得などを目的に大学卒業後2年間、幅広い診療科で研修を行う制度で、2004(平成16)年にスタートした。初期研修後に行う専門医を目指した研修を一般的に後期研修としている。
第3部
研修医
 
― 魅力感じやりがい ―
 
 福島医大付属病院(福島市)の手術室。脳の表面に腫瘍(しゅよう)ができる髄膜腫(ずいまくしゅ)の患部をモニターが映し出し、医師たちの視線が集中する。第二助手として手術に立ち会った安藤等さん(40)もその一人。執刀医が顕微鏡をのぞきながら行う緻密(ちみつ)な手技に見入った。
 安藤さんは福島医大脳神経外科の後期研修医として、今年2年目を迎えた。顕微鏡を使った高度な手術はまだ担当できないが、比較的容易なケースなら執刀医も務める。「今治療しないと死んでしまうという状況を救うのが脳神経外科。医師としての心の琴線に触れる」と、毎日にやりがいを感じている。
 千葉県出身の安藤さんは関西地方で会社勤めをしていた当時、阪神大震災を経験。被災の体験などが契機となって医学の道を志し、同医大に進学した。
 卒後に福島赤十字病院(福島市)で初期研修を修了後、医師としてのその後の進路を決定づける後期研修先を、一度は実家のある関東地方の病院と決めていた。
 しかし、先輩医師から本県脳神経外科の医師不足の現状を聞かされ、心が動いた。「先輩医師は10年、20年後の本県の医療を心配していた。医大出身者として自分も県の役に立てるかなと考えた」。県内医療に対する「使命感」が芽生え、当初の予定を変更して同医大に戻った。
 県内16の臨床研修病院で3月末に初期研修を終えた研修医85人のうち、初期研修先の病院や同医大での後期研修に進んだ医師は58人で全体の68%。県は後期研修医の確保が県内への医師定着につながるとみて、病院の研修プラン作りの支援などを行っている。
 県外出身者が県内にとどまろうと考えるきっかけは何か。安藤さんは自身の経験から、ロールモデル(手本となる医師)の存在が大きいと話す。「福島県の住みやすさは魅力だが、われわれはそれ以上に、病院の研修プログラムや指導医の人格にひかれる。魅力のある人物がいれば、病院も魅力的になる。結局、人が人を呼ぶ」。
 


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