『医療危機 ’09ふくしまの現場から』TOP
 臨床研修病院
【3】―2009.08.02
安田さんから指導を受ける小林さん(左)=公立岩瀬病院
県内の臨床研修病院 

 初期研修医を受け入れる病院を地域別にみると県北5、県中5、県南1、会津3、いわき2。本年度採用数が多かったのは福島医大付属病院(福島市)16人、総合南東北病院(郡山市)9人、太田西ノ内病院(同)8人の順だった。
第3部
研修医
 
― 「争奪競争」に苦戦  ―
 
 「ここに住んでみたいと思った」。公立岩瀬病院(須賀川市)の初期研修医小林秀孝さん(47)は兵庫県たつの市出身。関西地方で会社員などをしていたが、もともと志望していた医師を目指し、一念発起して北陸地方の医科大を卒業。生まれ故郷と規模が同程度の須賀川市の風土に愛着を感じ4月、研修医として同病院の門をくぐった。いとこが相馬市在住で、過去に何度か本県を訪れていたことが縁となった。
 小林さんは2004(平成16)年に初期研修(卒後臨床研修)制度が始まって以来、同病院が初めて受け入れた研修医。ベテランぞろいの同病院の勤務医たちは「新しい血」の流入を歓迎する。「今後も継続的に研修医を受け入れ、指導のシステムを整えたい」と、指導医を務める内科部長の安田千尋さん(50)。研修プログラムの責任者で放射線科部長の景山和広さん(52)は「地域の医師を増やすことに貢献できる」と受け入れの意義を語る。
 初期研修医は後期研修で別の病院を選択するケースもあるが、そのままとどまる可能性もあり県内16の臨床研修病院は初期研修医の確保に力を入れている。しかし、このうち9病院は本年度採用実績が募集定員の半数以下にとどまった。
 研修医が自由に研修先を選べる現行制度の下、全国の有名病院との「研修医争奪競争」で公立岩瀬病院などは苦戦を強いられているのが現状。地域の医師偏在を緩和しようと本年度、都道府県ごとの募集定員を制限する見直しが行われたが、実効性は未知数といえる。
 「常勤医が20人おり、指導面で公立岩瀬の潜在能力は高い。しかし、医学生の目は大きい病院に向いている」と、安田さんは医学生の「大病院志向」を指摘する。医学生が研修先を決める際に大きな影響力を持つのはOB・OGから伝わる病院の評判。採用実績の乏しい病院は医学生の注目を集めにくい面がある。
 景山さんは国に提言する。「研修制度は過渡期にある。『小さい病院志向』が医学生に生まれるような制度を考えていってもらいたい」。
 


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