『医療危機 ’09ふくしまの現場から』TOP
 看護師不足
【3】―2009.11.26
看護師不足
看護師の12月の出勤表を確認する二瓶看護部長。ぎりぎりの人数でローテーションを組むため、出勤日を決めるのも一苦労だ
 公立小野町地方綜合病院の改革プラン

 小野町病院は今年まとめた改革プランに、2010(平成22)年度から予算、人事などの独立した権限を病院が持つ「地方公営企業法の全部適用」を導入することを盛り込んだ。
第4部
公立病院
 
― 若手の確保が困難/業務量に見合わぬ低収入  ―
 
 「病欠が1人いて、12月の出勤日のローテーションを決めるのが大変」。公立小野町地方綜合病院(小野町)の二瓶美代子看護部長(57)は、看護師が1人欠けても回らなくなる、ぎりぎりの勤務体制を嘆いた。
 同病院は昨年度に続き本年度も看護師の新規採用がない。ここ数年、定年退職などで立て続けに減少したため、やむなく退職者2人を臨時職員として雇っているが、高齢化は顕著。病院の奨学金制度を利用して看護学校を卒業し就職した職員3人は最近、2、3年間の勤務の後に退職してしまった。「ここは交通の便が良いとは言えない。医師に関して大病院志向とよく言われるが、ナースもそうなのかなと感じる」と、二瓶部長は推し量る。
 入院基本料は看護師1人当たりの患者の数などにより決定されるため、看護師の数は病院の収入に直結する。「患者7人に対して看護師1人」(7対1)なら手厚い看護が可能と判断され、診療報酬上、最も高い入院基本料が設定される。以下、「10対1」「13対1」「15対1」と看護師1人分の患者が増えるにつれ基本料は下がる。同病院の看護体制は「15対1」。二瓶部長は「看護師の業務量は『10対1』に相当する。大変な思いをしても、診療報酬上の点数はそれに見合わない」と指摘する。同病院には寝たきりの入院患者が多く、看護師には介助業務が重くのしかかる。本来は看護補助者の業務であっても、一般病棟には看護補助者は宿直しないため、夜間は看護師がカバーする。
 同病院は「10対1」の看護体制を目指すが、介助業務の比率が高いこともあり、若手看護師を呼び込むのは難しい。籠田良作事務長(63)は「この病院がなくなれば、介護を求める患者が行く所をなくす。地域ごとに、地域が求める医療がある」と、厳しい経営の中でも病院の存在意義を強調する。しかし、人件費の削減以外に改善に向けた即効性のある打開策は見いだせないのが現状だ。
 


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