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 公設民営
【5】―2009.11.28
公設民営
公設民営方式で本年度開設された泉崎南東北リハビリテーション・ケアセンター
公設民営病院 

 公立病院の経営を指定管理者である民間医療法人に委託する制度。県内では泉崎南東北リハビリテーション・ケアセンターのほか、町立三春病院を星総合病院が、町立猪苗代病院を温知会が運営しているケースがある。
第4部
公立病院
 
― 「お役所体質」変化/利用者目線のサービスへ  ―
 
 「週に1、2度だけ来る非常勤の医師ならすぐ見つかったが、村に定着する常勤医はいなかった。多くの医師は、自分の子どもの教育面などを考え、村を敬遠したのだろう」。泉崎村立病院に、前身の診療所時代から30年以上にわたり勤めた成沢俊雄医師(75)はそう振り返る。65歳で定年のところを、嘱託医として昨年度まで働いた。村の医師不足のためだった。
 村には同病院のほかには歯科医院しか医療機関がなく、常勤医不足に陥り存続の危機に立たされてきた同病院の診療機能の維持を、村民は強く望んでいた。
 医師不足の解消策として村は昨年度、公設民営方式の病院として存続させることを決め、経営委託先の指定管理者に脳神経疾患研究所(郡山市)を決定。病床を介護用施設に改修し、病院は介護老人保健施設「泉崎南東北リハビリテーション・ケアセンター」と、併設施設の「泉崎南東北診療所」として生まれ変わった。「当初は入院機能も残したかったが、経営上難しいという話になり断念した」と村の担当者は語る。
 入院機能は失われたが、診療所ではこれまでなかった小児科の診療も始まった。郡山市に大病院を持つ指定管理者が曜日ごとに専門医を派遣するなどし、医師不足の心配は当面なくなった。「大きな病院が背後にあるので、信頼度は高い。新しいスタッフも地域に根差した医療を目指しており、連携していきたい」と、小林千恵子村保健福祉課長(54)は民営方式を好意的に受け止めている。
 成沢医師は本年度から同施設の施設長に就いた。「医師不足と高齢社会の進展があり、病院が介護老人保健施設になるのも時代の流れだろう」と話す。成沢医師が痛切に感じているのは、公立病院当時の「お役所体質」が変化したことだ。「公立病院の公務員医師として努力してきたつもりだが、民営になってより一層、利用者の目線に立ったサービスを自覚しないといけないという気持ちになった」。昨年度に比べ経営が安定した今も「スタッフ不足の解消など、まだ努力しないといけない面がある」と意欲的に語る。
 


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