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 診療制度
【6】―200911.29
診療制度
南相馬市立総合病院内に掲げられた、脳神経外科の外来診療の制度を伝える文書、患者に理解を求めている
南相馬市立病院の改革プラン 

 市は市立総合と市立小高の2病院の再編・ネットワーク化や経営形態の見直しについて2011(平成23)年度を目標に方向性・結論を出すとしている。
第4部
公立病院
 
― 重篤患者を最優先/地域唯一の入院機能守る  ―
 
 「病院が相双地域の中核病院として機能するためにも、ご理解をお願い申し上げます」。南相馬市立総合病院内に「脳神経外科外来受診の皆様へ」と題した文書が掲げられ、8月から同科の外来診療を制限し、入院診療に重点を置く病院の方針を伝えている。
 南相馬市にある民間病院で7月、医師1人が退職し、同病院は脳神経外科の入院受け入れを取りやめた。結果、相双地域で同科の入院治療を行うのは市立総合病院のみとなった。
 同病院に患者が集中すれば地域唯一の入院機能に支障を来す。同病院は外来診療を可能な限り他の病院に任せ、入院診療に特化せざるを得なかった。「脳卒中など、重篤で入院の必要のある救急患者を受け入れるためにも、必要な判断だった」。同病院の小沢政光事務部長(55)は説明する。
 今回の外来診療制限はそもそも、同病院の同科も常勤医が2人と少ないことが背景にある。小沢部長は「相双地域では脳神経外科だけでなく、産科、循環器科、麻酔科など医師不足の診療科がたくさんある」と、地域の現状を嘆く。
 同市は昨年6月、医師不足で市立2病院の診療体制の維持が困難な状況にあるとして、医師の待遇改善を図るほか市民に現状への理解を求める「非常事態宣言」を出した。宣言では市立病院常勤医師の報酬アップをうたい、これにより医師は年収で平均約200万円の増収、県内公立病院では最上位の待遇となった。
 同市は、待遇の良さを前面に出すなどしながら、医師の招聘(しょうへい)活動に力を入れているが、「残念ながらまだ、待遇改善策が(新たな)医師確保につながったケースはない」と小沢部長。一方で「常勤医の納得は得られた」と、医師のさらなる流出を防ぐ効果はあったと考えている。
 国のガイドラインに沿う形で県内の公立病院で統合・再編や公設民営などが相次ぐ中、同市も将来の病院の在り方を検討している。現在進めている医師確保策の成否が、判断の重要なポイントになる。
 


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