異彩の画家・若冲(2)老松鸚鵡図、鶏図 徹底した写実から深化

  このエントリーをはてなブックマークに追加 
「老松鸚鵡図」 絹本著色 一幅 個人蔵

 松の枝が画面中央を対角線に横切り、そこに1羽のオウムがとまる。薄塗りの胡粉(ごふん)(日本画の白色絵具)で羽毛が丁寧に描かれ、瞳は漆で盛り上げて立体感が出されている。オウムの生命感が優れているだけではなく、松の葉叢(はむら)や右下に描かれた滝の表現も勢いがあって鮮やかだ。

 江戸中期に京都で活躍した「奇想の画家」伊藤若冲(じゃくちゅう)(1716~1800年)は、長い画家生活の中で動植物画を多く描き続けた。代表作の「動植綵絵(どうしょくさいえ)」は全30幅に及ぶ作品群。鳥に四季の木や草花を配した緻密な花鳥画が主な画題で、40代の全てをこの制作に投入したとされる。

 「老松鸚鵡(ろうしょうおうむ)図」(個人蔵)は落款の書体から初期作品に分類されるが、松の表現や胡粉の使い方から動植綵絵に先行する優品として名高い。葉叢や滝の描き方は動植綵絵の鸚鵡図と全く同一で、オウムが羽をよじる姿は初期作品の方がリアルだという評価もある。

 県立美術館の伊藤匡学芸員は「オウムは舶来の珍しい鳥で、京都でも見せ物として扱われていた。実際に観察してスケッチしたのではないか。古画の模写が重要視されていた当時の画壇で、事物そのものを観察する若冲は異質の存在だった」と解説する。

 若冲作品といえば鶏図が最も知られ、動植綵絵でも30幅のうち鶏図が7幅を占める。自宅にニワトリを飼って観察していたエピソードは有名だ。数十羽を窓下に飼い、何年も写生を繰り返したという。ただしニワトリそのままの姿を描き続けたわけではない。

 「鶏図」(1789年、島根県立美術館)では、雄鶏が片足立ちでバランスを取り、雌鶏がその足元でしゃがみ、そばに3羽のひなが寄り添う。雄鶏は歌舞伎の決めポーズのような姿勢で、尾っぽはS字状に上へと伸び、縦長の画面を有効に使う。考え込まれた構図のため写生画としては不正確かもしれないが、若冲らしい幻想的な美しさがある。

 伊藤学芸員は「徹底した写実から始まり、そこから深まってデフォルメや簡略化にも行き着く。若冲のオリジナリティーはそこにあり、まさに奇想の人だった」と話している。

動植綵絵(どうしょくさいえ) 花鳥画の大作30幅からなる伊藤若冲の代表作。1757(宝暦7)年ごろから66(明和3)年ごろにかけて制作され、京都・相国寺に寄進された。1889(明治22)年に皇室に献納され、現在は宮内庁で保管されている。

若冲バナー