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海岸浸食
海岸浸食
島崎海岸で朝日を背負って駆ける馬の風景は、旧鹿島町の風物詩。砂浜の減少は野馬追にも影響する=南相馬市
第1部 熱くなるふる里

(3)海面上昇 砂浜が半減 //道路陥没や遊泳禁止も//  (08.01.05)
 「海岸線が崩れ、道路のルートを変更するため工事している場所がある」。浪江町の廃車買い取り・再生の会社社長でサーフィンが趣味の池本篤さん(41)は、同町と南相馬市の境、県道広野―小高線(浜街道)の工事現場に案内してくれた。
 現場は、直線道路が7、80メートルにわたり陥没、崩れた個所を迂回(うかい)する工事が行われていた。県は電源立地交付金などを活用して浜街道整備を進めているが、思わぬ足止めを食った。
 昨年、サーフィンの世界大会が開かれた南相馬市から双葉郡にかけての海岸線は、サーファーにとって「パーフェクトな波」に乗れる絶好のポイントが多い。請戸海岸でほぼ毎日、波に乗る池本さんは、故郷の砂浜の変化を肌で感じている。数十年前に比べ、砂浜が半分に減ったという。
 南相馬市鹿島区の右田浜海水浴場には、「本年度から環境悪化のため遊泳禁止とします」という看板が立っている。旧鹿島町で唯一の海水浴場として、町や町観光協会などが観光拠点として整備してきたが、数年前から砂がなくなってリンゴほどの石がごろごろとむき出しになり、3年前に閉鎖した。にぎわいを見せていた浜辺は、今では見る影もない。
 一方、右田浜はサーフィンのメッカになり、良質な波を求めて冬でも大勢のサーファーが通う。近くでサーフショップを営む鈴木康二さん(52)は「昔の海は夏熱く、冬は冷たかったのに、今はまったく逆に感じる」と海の異変を語る。
 福島大の渡辺明教授の研究では、本県の海岸線ではこの100年間に海面が9.5センチ上昇した。海岸浸食と地球温暖化との因果関係はまだ不明だが、国際的な専門家機関IPCC(気象変動に関する政府間パネル)によると、北極の氷が解けるなどして海面が上昇した場合、地球の自転の影響で太平洋の中でも西側、本県から三陸にかけての海岸線は最も海水面が高くなるとみられている。
 南相馬市鹿島区で唯一の砂浜の烏崎海岸は、野馬追前の馬術の訓練に最適の場所。30年近く、馬術指導を続ける菅野長八さん(56)は「砂浜での馬術練習は、馬の足に負担を掛けないためにも絶好の練習場所」と砂浜のありがたみを語る。その砂浜について「原因はよく分からないが、砂が海にさらわれているのは確か」という。砂浜は以前の半分程度に減少し、朝日をバックに何頭もの馬が重なって疾走する勇壮なシーンが見られなくなると懸念する。
   
 


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