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『環境’08 ふくしまを守る』トップ

   
 
猪苗代湖を守る
猪苗代湖を守る
猪苗代湖の北部に広がる猪苗代町の田園風景。湖の水質を守るために、地域の農家は懸命な努力を続けている
第4部 森との共生

(4)水質浄化 農業の挑戦 //知恵を絞り意識も改革//  (08.10.09)
 磐梯山に連なる山々に囲まれた猪苗代湖。山からの豊かな水は、田畑を潤しながら湖に注ぎ込む。
 猪苗代町は、猪苗代湖の水質を守るため、田畑で使った水を汚さないような農業を実践している。2002(平成14)年度に化学肥料と化学農薬の軽減を目標の柱とした「環境にやさしい農業推進計画」を策定した。自然環境に配慮した農業は農家にとって新たな負担となるが、古里を愛する心が一つとなり取り組みは根付きつつある。
 同町烏帽子地区の水稲農家古川剛さん(57)は除草剤を使用せず、機械による除草作業を続けている。「労力の面で最も大変なのは除草だが、湖を守るためには努力しなければならない」と語る。
 農業生産組織「HAPS」の代表も務める古川さんは、水田全体にまいていた肥料を、稲を植え付けた場所だけに施す「側条施肥農法」に挑戦した。この方法では専用の田植え機が必要となるため、「HAPS」は300万円以上の田植え機を共同購入して肥料の使用量の削減に努めている。
 春先の代かきで前年の稲刈りの際に田んぼに残った稲わらが排水路から猪苗代湖に流れ込み、湖底に堆積(たいせき)して水質の悪化をもたらすともされている。稲わらなどの流出を防ぐため、排水路にネットを設置したり、使用する水量を極端に少なくして田んぼの水の中で稲わらが浮かばないようにする「浅水代かき」を導入するなど各集落、農家が知恵を絞った。
 同町農林課長の渡部大助さん(55)は「猪苗代湖を守るために考えられることはやってきた」と農家の努力をたたえる。
 猪苗代湖は昨年度の環境省による河川・湖沼・海域水質測定結果で水質「日本一」から転落した。しかし、古川さんや渡部さんらに悲壮感はない。「農家の意識が変わった。除草剤を使用した形跡も見られなくなった」と渡部さん。環境保全型農業で収量や生育状況にも手応えを感じている古川さんは「環境に優しい農業は良いことも多い」と笑顔で話す。農家の努力の先には希望の光が見える。
   
 


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