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温暖化防止の知恵
温暖化防止の知恵
水田で行われているメタンの発生抑制に向けた試験研究。研究成果に農水省が着目、実用化へ全国でデータ収集中
第4部 森との共生

(5)メタン抑制技術 開発  //研究の成果 国が熱視線//  (08.10.10)
 古くから日本では、森で生まれた水が水田で活用され、豊かな実りをもたらしてきた。水田は「ヒートアイランド現象」と呼ばれる市街地の気温上昇を抑制する働きがある一方で、二酸化炭素の21倍の温室効果をもたらすといわれるメタンガスが発生する。
 「食料生産と環境のバランスは必要不可欠。地球温暖化が進めば食料生産にも影響が出る」と話すのは、県農業総合センター環境・作物栄養科長の三浦吉則さん(46)。メタンの発生抑制農業技術の研究に取り組む国内の第一人者だ。
 水田から、なぜメタンが発生するのか。三浦さんによると、土中の微生物・メタン生成菌の活動が原因という。稲わらが混じった水田は微生物にとっては栄養豊富な環境で、水中の酸素を取り込んで仲間を一気に増やす。三浦さんは「稲わらは微生物の餌として栄養価が高く、微生物が酸素を消費して無酸素の状態になると、メタンが発生する」と解説する。
 長年の研究の結果、三浦さんと同センター研究員の斎藤隆さん(34)は、従来の栽培法と結び付けたメタン発生を抑制する農業技術を開発した。6月下旬から7月上旬にかけ、稲の根を丈夫にするために水を抜く「中干し」と呼ばれる作業を、通常よりも1週間早め、中干し期間を通常の二週間から約20日間にすることで、メタンの発生を約50―25%削減できることを突き止めた。三浦さんは「生育や収量に影響が出ないように研究した」と明かす。
 三浦さんの研究成果に国が注目した。農林水産省は実用化の第一歩として本年度から二年間、三浦さんを中心とする同センターメタン研究チームに本県や新潟、熊本など全国8県の水田でのデータ収集を委託した。国の農業環境技術研究所がデータをまとめ、気候変動に関する政府間パネル「IPCC」に提言する。
 三浦さんは中干し作業が先人の知恵や経験から生まれた技術であることを強調する。「今まで農家が奨励していた技術がメタン抑制につながることを実証できた。そのことが何よりも重要だ」=第4部おわり
   
 


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