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『環境’08 ふくしまを守る』トップ

   
 
公共事業と環境保護
コナラなどを植樹した斜面の下草刈りに取り組む地域住民ら=11月23日、いわき市
第5部 環境社会へ

(4)工事の影響 最小限に //住民参加のエコロード//  (08.12.06)
 いわき市田人町荷路夫地区で行われている国道289号荷路夫バイパスの改良事業で、自然との共生を目指した道路工事が進められている。
 「エコロード事業」と名付けられ、道路予定地の植物を可能な限り移植、斜面の緑化では、工事で掘り起こされた表土の中から在来種の植物の種子を採取し吹き付けている。野生動物が交通事故の被害に遭う「ロードキル」を防ぐため、道路の下に動物専用のトンネルを設置するなど生態系を守る試みが進められている。
 同バイパスは幅員が狭い上に急カーブが続く。阿武隈山地の交通の難所を解消するため2001(平成13)年度から改良事業が始められた。
 周辺で特別な希少動植物は確認されていないが、タヌキやノウサギが生息する里山が広がっている。身近な自然を少しでも守ろうと県、NPO、地域住民が連携して研究会を立ち上げ、自然と共生した道路工事の在り方を検討、実践してきた。
 県鳥獣保護センターの獣医師で県野生動物専門員の溝口俊夫さんはアドバイザーとして検討にかかわっている。溝口さんは「道路整備などの公共事業に着手する場合には、行政の土木部門や環境部門、地域住民が連携し、人間の利便性確保と環境保護のバランスをとる『環境デザイン』の視点が不可欠ではないか」と提言する。
 環境デザインは、自然環境とかかわる公共事業と、動植物を守る環境保護を対立軸ととらえるのではなく、自然に与える影響を最小限にしながら、人間の手を入れることで自然とのより良い関係を構築しようという考え方だ。
 研究会は、自らの取り組みを理解してもらおうとエコロード解説員の制度を設け、次世代を担う子どもたちに自然を守る工夫を伝えるなど、環境教育の面でも活躍している。活動の中で、豊かな海をはぐくむための沢沿いの林再生の取り組みもスタートした。
 溝口さんは「中山間地は日本の原風景で国土の7割を占める。いわきでの取り組みは、福島発の環境デザインの全国的なモデルケースになるのではないか」と夢を語る。
   
 


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