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治水対策
治水対策
人命、財産に深刻な被害をもたらす洪水。温暖化に伴う気象変動に対応した治水対策はまだ不十分だ
第1部 熱くなるふる里

(9)豪雨急増 備え不十分 //ソフト面の対策重要に//  (08.01.11)
 超大型台風の襲来や相次ぐ大雨、一転して干ばつによる水資源の不足など、地球温暖化に伴う気象変動は地球規模で動いてきた降雨システムを変えてしまうと指摘される。県によると、1時間に50ミリを超える「滝のような雨」を県内で観測したのは、1979(昭和54)―86年の10年間で年間平均1.9回だったが、87―96年は同2.1回に上昇、97―2006年は同4.5回に急増した。
 国土交通省の諮問を受けた社会資本整備審議会の専門小委員会は昨年11月、「気候変動に『適応』する治水施策」に関して、「過去の気候に対応し防災体制を整えてきた各地域では、水害や土砂災害、高潮災害などの頻度や規模の増大による壊滅的な被害の発生、渇水の危険性の増大による事態の深刻化が懸念される」と警鐘を鳴らした。温室効果ガスの抑制を待つだけでなく、環境の激変に社会を「適応」させるべきという意見は根強い。
 県のまとめでは、県内の河川総延長は4864キロ。このうち洪水対策のため改修対象に位置付けられた個所は延長2590キロあるが、実際に改修されたのは1213キロ(46・9%)、暫定完成の670キロ(25.9%)を含めても残り23・3%が未改修のまま。しかも、1時間雨量50ミリの大雨でも安全を確保できる河川は全体の23・4%にとどまっている。
 河川などの治水対策は、過去の雨量データをもとに設計してきた。集中豪雨などの異常気象が今後急増しても、万全の備えとはいえない。
 また、河川や海岸整備は計画から事業完了まで数十年の歳月を要する場合が少なくない。例えば、会津美里町から会津坂下町に流れる宮川の改修は、延長17.2キロの整備に1951年から2004年まで53年間かかった。
 県土木部は「ハード面の治水対策は必要だが、今後はソフト面の対策がより重要になる」という。地方自治体の財政が逼迫(ひっぱく)し、大規模な治水事業に取り組む体力は乏しい。補助金や交付金が見込める災害復旧事業で事後対応しながら、予防面では洪水ハザードマップの作製や洪水予報などを整備、住民が早く逃げる施策を強化している。
 一方、極端な少雨や積雪量の減少で大規模な渇水の懸念も指摘されている。環境保護の視点から中止が相次ぐダム整備について、洪水対策や水資源確保の視点から再評価する意見が、環境保護の立場に立つ人からも聞こえ始めている。
   
 


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