【 喜多方・ふれあい通り商店街(下) 】 漢字から広がる日常的光景

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高橋さんの刻字作品が飾られている楽篆工房。現在は家族が漢字ギャラリーを営んでいる

 「この文字は何を意味しているのかな?」「私、分かったかも」―。喜多方市中心部のふれあい通り商店街。児童や観光客が各店舗に掲げられている木製看板を謎解き気分で見つめ、楽しそうに会話を交わす。看板に書かれているのは漢字の成り立ちを表した「古代文字」。商店街では日常的な光景になった。

 「漢字のまちづくり」。この取り組みは震災前に、県喜多方建設事務所が呼び掛けた地域づくり懇談会がきっかけで始まった。同市の楽篆(らくてん)工房を主宰していた刻字家の故高橋政巳さんら市民から一風変わったアイデアが飛び出し、漢字の原形となった約3000年前の中国の古代文字をデザインした木製看板が商店街の各店舗などに設置された。

 その後、事業を推進する有志団体「喜多方を漢字のまちにする会」が発足。原発事故の影響で教育旅行が激減する中、蔵の街並みや喜多方ラーメンに続く新たな観光資源として注目を集め、現在は市内の220カ所以上に看板が設置されている。

 「町歩きを楽しんでもらい、地元の人と触れ合うきっかけになれば」。同会の上野昌宏会長(40)は期待を込める。看板の古代文字は設置店の業種や店名になぞらえて書かれている。説明書きはなく、児童や観光客は想像力を働かせて答えを探る。分からない時は店の人に説明を求めることで、コミュニケーションの機会につながるという。

 ◆活動つなげる

 漢字の語源や成り立ちを学ぶ講座や辞書にはない「創作漢字」のコンテストなども開催され、漢字のまちづくりは着実に広がった。小学生が商店街を巡って店の人に漢字の読み方や意味を尋ね、その成果を発表する「古代文字ミステリーウォーク」は人気企画として定着している。

 しかし、事業が軌道に乗ってきた2015年11月、高橋さんが道半ばで病に倒れた。古代文字が人々を引き付ける理由は、高橋さんだからこその技と心にあった。同工房は一時休館に追い込まれ、「活動はどうなるのか」と周囲から心配の声が上がった。それでも、高橋さんの次女梢さん(39)は「さあこれからという時だった。そこで終わらせるわけにはいかなかった」と当時の心境を振り返る。

 同工房は昨年4月に漢字ギャラリーとして再スタートを切った。現在、高橋さんの手掛けた古代文字1万件以上をデータに保存。特殊な印刷や刻字を駆使しながら古代文字のデザインを再現している。昨年度からは古代文字と地酒に親しむイベント「地酒秘蔵ツーリズム」も始まった。評判は上々だ。「活動が今も継続していることを発信したい」と梢さん。漢字のまちづくりは喜多方の新たな代名詞の一つになっている。

 ≫≫≫ ちょっと寄り道 ≪≪≪

 【煎餅の炭火焼きが体験できる】商店街に直売店を構える山中煎餅本舗は1900(明治33)年創業の老舗。本県の観光PRとして、人気アニメ「サザエさん」のオープニングで紹介されたことがある。店内ではたまり(しょうゆ)、会津山塩、ラーメンなど約10種類を販売。煎餅の炭火焼き体験も受け付けており、手軽に出来たての煎餅を味わえる。予約不要。営業時間は午前10時~午後4時30分。年末年始は休業。

〔写真〕人気アニメ「サザエさん」のオープニングで紹介されたことがある「山中煎餅本舗」