【 いわき・植田の歩行者天国 】 継続が生んだ可能性 街支える力に

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以前は活気にあふれた植田町の目抜き通りを歩きながら、鈴木さんはこれからの商店街に思いをはせる

 普段は静かな目抜き通りにあふれる人、人、人。いわき市南部にある植田町の中心街で30年以上続く歩行者天国は、商店街がにぎやかだった頃を思い出させる。

 植田町は、江戸時代に宿場町として発展、鉄道や河川など交通の要所として商業が盛んとなった。官公署も置かれ、同市南部の政治、経済の中心地として栄えた。昭和30年代以降、藤越植田店、亀宗植田店、イトーヨーカ堂を核とする植田ショッピングセンターなど大型店が次々と出店し、中心街はにぎわいを見せた。

 ただ、高度経済成長に伴い車社会が到来、交通網の整備により大型店が郊外に進出したほか、中心街の駐車場不足などにより人の流れが変化。1995年以降、大型店が次々と撤退。合理化に伴う官公庁の廃止が続き、中心街は存在感が薄くなり始めた。今、商店街を歩けばシャッターの下りた店が目立つ。

 勢いを失った植田町だが、昔のにぎわいを取り戻す日がある。5月と10月に1日ずつ開かれる歩行者天国だ。5月5日のこどもの日に本町通り、10月の体育の日に台町通り(現うえだパティオ通り)が通行止めとなり、多くの出店が軒を連ねる。児童の鼓笛パレード、農業高生の農産物販売、子どもに大人気のミニSL―。老若男女が楽しめる催しが開かれ、商店街は普段と違った雰囲気に包まれる。

 「どこから人があふれてくるんだろうと思うよ」。歩行者天国を主催する、うえだ商店会会長の鈴木修一郎さん(64)は笑う。歩行者天国は1973年9月、全国での流行を受けて本町通りで開催された。84年には近接するうえだパティオ通りでも始まり、植田町の風物詩として続いてきた。東日本大震災があった2カ月後の5月にも、子どもたちのためにと開かれた。

 鈴木さんは、静かな商店街を見つめながら「(歩行者天国は)うえだ商店会の唯一の底力。1日だけのにぎわいだけどね。でも継続は力。なくしてしまったら、植田の魅力が減ってしまう」と思いを語る。

 ◆新風吹き込む

 歩行者天国では近年、若い世代の活躍が光る。若い来場者を呼び込もうと、2年前から、地元の若手経営者らが食と音楽のイベントを開催。市内の人気飲食店が特製メニューを提供、有名ミュージシャンのライブも開かれ、おなじみのイベントが多い歩行者天国に新風を吹き込んだ。

 イベントの仕掛け人で、震災後に東京の大手映像制作会社から家業の植田印刷所の社長に就いた渡辺陽一さん(39)は、空き店舗が目立つ商店街を「しがらみのない、可能性の街。やりたいことが多くて追い付かない。これから面白い街になるよ。空き地は可能性でしかないから」と力を込める。

 かつて魅力にあふれた街で始まった歩行者天国が、今では街を支える魅力になった。変化が求められる現在で、変わらずに続けることの価値を教えてくれている。

いわき・植田の歩行者天国

 ≫≫≫ ちょっと寄り道 ≪≪≪

 【20種類の豆から選べる】JR植田駅の目の前にある珈琲焙煎(コーヒーばいせん)所「ボウシコーヒー」は浅煎(い)りから深煎りまで、さまざまな産地のコーヒー豆(100グラム480円~、税込み)を約20種類の中から選べる。入れ方が好みで選べる持ち帰り用コーヒー(450円~、同)もあり、店内に食べ物を持ち込んで味わうこともできる。抽出方法が学べるイベントも不定期で開催。時間は午前11時~午後6時(日曜のみ午前10時~午後5時)。

いわき・植田の歩行者天国

〔写真〕JR植田駅前で新たな集いの場となっているボウシコーヒー