水のあしたTOP
からむし織 会津編
昭和村のからむし織はきれいな水が上質な品質を支えている。協会員たちは冬の時期は思い思いの作品づくりに取り組む
ふくしま発 水のあした
第1部 暮らし支えて【19】
2010年2月11日付
からむし織 会津編

きれいな冷水が条件 高い品質を全国に発信
 冬、深い雪に覆われる会津の山々。昭和村では、山々から流れ出る豊富な水を活用した「からむし織」の伝統が引き継がれている。
 カラムシから引いた繊維で織るからむし織。村は本州唯一のカラムシの生産地として知られる。県指定重要無形文化財のからむし織の作業は5月に始まる。カラムシを栽培する畑の畑焼きから始まり、肥料を施し、風の被害を防ぐ垣を作る。焼き畑は害虫を駆除するとともに、カラムシの生育を均一にする効果がある。カラムシは2カ月で約2bの高さに育ち、7月に刈り取られる。すぐに山から流れるわき水や地下水などの冷水に浸される。乾燥を防いで皮をはぎやすくし、繊維を引き締めるためだ。水温が高いと、傷んでしまうため、冷水は不可欠という。同村のからむし工芸博物館学芸補助員の平田尚子さん(28)は「夏でも冷水が確保できるこの自然環境があって、からむし織が成り立っている」と話す。
 冷水に浸された後、熟練の技術で表皮から繊維を取る工程を経て、「原麻」と呼ばれる糸紡ぎの前の段階で新潟県に出荷される。同村のからむしは「こしと張りがある上質の逸品」との評価を呼ぶという。新潟県に送られた原麻は、国の重要無形文化財であるからむし織「越後上布」「小千谷縮」の材料となる。いずれのからむし織とも、同村で生産された上質なからむしを使うことが文化財指定の条件となっており、同村でのからむし生産技術は、国選定保存技術に認定されている。
 現在、村でからむし織の材料となるカラムシを栽培しているのは、村からむし生産技術保存協会の48人。会員の五十嵐文江さん(64)は夫の好夫さん(68)とともに栽培を続け、村の伝統を守る。「水が汚いと、カラムシに色が付いてしまう。きれいな冷水がある自然条件がからむし織に合っている」と好夫さん。協会員は原材料出荷以外に、自身で帽子や手提げなどのからむし織の作品を手掛ける人たちも多い。
 「からむしの繊維は生き物。繊維のために水は欠かせない貴重な資源」と村総務課企画係の本名久喜さん(46)。同村は16日から東京・恵比寿のギャラリーで初めての見本市を開く。村の自然に支えられて品質を保持するからむし織が全国へ発信される。
 


〒960-8648 福島県福島市柳町4の29
ネットワーク上の著作権(日本新聞協会)
国内外のニュースは共同通信社の配信を受けています。

このサイトに記載された記事及び画像の無断転載を禁じます。copyright(c) 2001-2004 THE FUKUSHIMA MINYU SHIMBUN