被害者/相手ペースにはまる STOPなりすまし詐欺

 
被害者/相手ペースにはまる

寸劇でなりすまし詐欺の手口を紹介する福島署員。広報啓発を強化しているものの、被害は相次いでいる

 ◆送金寸前、冷静に 

 「男はとにかく弁舌巧みで、そのペースに巻き込まれてしまった。最初は疑っていたのだが...」。南会津町の70代男性は「なりすまし詐欺」の被害を寸前で免れた際、電話口の男の巧みな話術をこう振り返った。

 昨年12月17日午前、男性の自宅の電話が鳴った。電話機の表示は「非通知」。町役場の「カネコ」を名乗る男が「医療費の還付があるので手続きをしてほしい」と切り出した。男性は、仕事の関係で町役場職員の大半の名前を把握していた。「『カネコ』は役場にはいない。振り込め詐欺ではないか」と指摘すると、上司を名乗る男に代わって、還付手続きする町内の現金自動預払機(ATM)の具体的な場所を伝えてきた。

 ■指示でATM操作 

 「本当かもしれない」。このATMを何度も利用していた男性は、設置場所が正しい上、男の丁寧な言葉遣いに、そう思った。ATMに到着すると、事前に番号を教えていた携帯電話が鳴った。預貯金を引き出す経験しかなかった男性は、男の指示通りに操作した。還付に必要な番号として入力を求められたのは「350000」。しかし、ATMは送金額を入力する画面を表示していた。

 「おかしい。35万円をだまし取られるのではないか」。次に男が伝えてきた振込先とみられる口座番号は、指示に従わず、でたらめの番号を押し続けた。これが、被害を免れる分水嶺(れい)となった。男性は「話を聞くにつれて信じる気持ちが大きくなっていった」と心理経過を明かした。

 ■誰もが被害に 

 8割が60歳以上で7割が女性、1人暮らしや夫婦2人暮らしが半数。県警が、まとめたなりすまし詐欺被害者の分析結果だ。

 聞き取りしたほぼ全員が「自分はだまされない」と思っていた。「最初から信用し、誰にも相談しなかった」と答えた人も7割弱に上った。県警は「誰もが被害に遭う可能性がある」と危機感を募らせる。