専門家の目/つながり希薄被害生む  STOPなりすまし詐欺

 
専門家の目/つながり希薄被害生む 

なりすまし詐欺の「誰でも加担できるシステム」を被害増の一因に挙げる生島教授

 ◆誰でも加担できる構造 

 最近の「なりすまし詐欺」は、息子や孫、警察官、銀行員、弁護士などさまざまな肩書の人物が登場する「劇場型」が主流だ。金融機関を利用した振り込みは窓口で水際阻止されることが多く、最近は受け取り役(受け子)が直接、現金を取りに訪れるケースや、被害者を巧みに誘導して上京させる「上京型」が増えてきている。

 「昔は『詐欺師』と呼ばれるほど専門性があったが、なりすまし詐欺は誰でも加担できるシステムになっている」。犯罪心理に詳しい福島大大学院人間発達文化研究科の生島(しょうじま)浩教授(58)は、被害が相次ぐ一因をこう分析する。

 ■役割分担 

 生島教授によると、「詐欺」の本質は変わらないものの、情報技術の発達とともに手口が多様になり、「進化」している。結婚詐欺など対人接触型に対し、不特定多数を狙うなりすまし詐欺は、摘発される危険性を低くするために役割を分担しているのが特徴だ。

 被害者、加害者とも、社会とのつながりが薄いことも拍車を掛ける。犯罪は「反社会的行為」だが、なりすまし詐欺は「非社会的行為」の側面があり、「不登校やひきこもりなどの非社会的行為が増えており、詐欺に加担する関係者に共通する要因ではないか」と指摘する。

 家族を装った電話を信じる被害者の側にも心理的な要因がある。「家族との関係が希薄であれば、『詐欺ではないか』と疑っても、『家族とつながることができる』との幻想に引き込まれがち。孤立した人が、孤立した人をだます悲しい構図になっている」

 ■「福島は狙い目」

  東京電力福島第1原発事故に伴って本県には賠償金など多額の現金が入ってきている。「犯行グループは『福島は狙い目』と考えている。東日本大震災から4年となり、抱える問題が深刻化している家庭もある」。生島教授は本県特有の背景にも目を向ける。