再び狙われる被害者 銀行口座まで奪われる

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 「忘れたい。忘れようと、ずっと思っている」。夫が、なりすまし詐欺に遭った上、その2年後には、何者かに銀行口座をだまし取られた。福島市の吉岡歌子(83)=仮名=は涙を浮かべながら、当時を振り返る。

 2011(平成23)年、80歳を超えた夫に「未上場株で、もうけ話がある」との電話がかかってきた。夫は「少しでもお金が増えるなら」と話に乗った。相手から数回にわたり、現金を要求され、数百万円を指定の口座に振り込んだ。

 何回目かの振り込みで郵便局に行った時、不審に思った職員が警察に連絡した。警察からは「もう絶対に払っちゃだめ。奥さんが止めなきゃ」と言われ、家族からは責められた。

 ■2年後の電話  

 歳月が過ぎ、被害に遭ったことを忘れかけていた13年の初秋。知らない会社から夫に電話がかかってきた。「詐欺で失ったお金を取り戻すので銀行で口座をつくってほしい」との内容だった。被害金の一部は振込先の金融機関から返還されていたが、夫は「少しでも戻るなら」と乗り気になってしまった。近くの銀行で新しい口座をつくり、相手の指示通り、通帳などを東京に送った。

 約1カ月後、銀行から電話があった。「口座から現金が引き落とされているが、何かに使いましたか」。身に覚えのなかった歌子が「通帳は送ってしまった」と伝えると、担当者から取引停止を告げられた。犯罪に悪用された可能性があると判断したとみられる。歌子は詐欺被害で責められたこともあり、家族には今も伝えていない。

 なりすまし詐欺などに使われたとみられる口座の現金を金融機関が被害者に返還する手続きを担う預金保険機構の公告によると、夫の口座は13年10月に銀行が凍結。口座には、犯罪被害による入金とみられる100万円が預金されていた。

 ■31%申請なし  

 同機構によると、14年度に凍結手続きが開始されたのは、全国の金融機関の2万9637口座で預金などの債権額は20億8900万円。県内に拠点がある8金融機関の60口座の約641万円も含まれる。凍結された口座のうち、半分は残高がほとんど残っておらず、何者かに現金を引き出された可能性があるという。

 凍結口座の残高は、その口座に現金を振り込んだ被害者に返金されるが、14年度には、残高の約31%について被害者から申請がなかった。同機構担当者は「犯罪被害に遭ったと知られたくなかったり、少額被害の場合は返金の申請をしないことも考えられる」と話す。