捜査かいくぐる手口 「狙われている」意識を常に

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捜査かいくぐる手口 「狙われている」意識を常に

最後の待ち合わせ場所となった駐車場の周辺。橋本(手前)は「何としても捕まえたかった」と悔しがる

 「正直に言うと、最初の電話の時は息子からと信じてしまった」。うその電話を信じたふりをして犯人との接触を試みる県警の「だまされたふり作戦」に加わった白河市の畳店経営橋本信一(76)=仮名=は明かす。

 橋本が息子を名乗る男から電話を受けたのは、5月下旬。「携帯電話を風呂に落とした。電話を新しくして番号が変わった」と言われ、それを信じた。翌日に偶然、本当の息子が自宅を訪ねてきたため、電話がうそと分かり、警察に通報した。

 ■次々変わる場所

 男が、再び電話してきたのは、今月5日。「がんになった。治療費の200万円を貸してほしい。上司の息子が受け取りに行く」という内容だった。橋本は一緒にいた警察官と顔を見合わせ、要求を承諾した。

 橋本は男が指定した午後1時にJR新白河駅に向かったが、男は次々と待ち合わせ場所を変えた。最後は矢吹駅近くの金融機関駐車場を指定してきたが、「上司の息子」は最後まで現れなかった。橋本が電話したところ、男は「いっぱいお巡りさんいたよね」と様子をうかがっていたことをほのめかした。

 ■「恥かかせられない」

 「家を出る時から見張られていたのかな」と橋本。事実、この日は自宅周辺で見慣れない県外ナンバーの車が目撃されていたという。

 「何としても捕まえたかったけど」。橋本は、こう繰り返しながら続けた。「結局、息子に恥をかかせるわけにいかないと考えちゃう。犯人は口がうまいし、『おかしいな』と思うような部分も、巧みに取り繕ってくる」。初めの電話の翌日、息子が訪ねて来なければ、だまされたままだったかもしれない、との思いが橋本にはある。一瞬でも別人の声を息子の声と信じてしまった。その悔いが橋本の表情を曇らせる。

 なりすまし詐欺の被害防止を担当する県警生活安全部の武藤裕紀参事官(58)は「なりすまし詐欺は、警察の動きに対応して手口が巧妙化している。言葉も巧みで、だまされた人が全くの不注意だったとは言い切れない現状もある」と同情する。

 そして、こう指摘した。「被害者をこれ以上、増やさないためには、高齢者の啓発だけでなく、多くの人が『自分の身内も狙われている』『自分の身の回りにも犯罪被害が発生するかもしれない』との意識を持ってもらうことが重要だ」(おわり)