民間の力で水際阻止 多くの目が被害減らす

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民間の力で水際阻止 多くの目が被害減らす

電話の内容に不審な点がなかったか確認する注意書きを示し、被害者役に対応する小野田次長。金融機関は被害の水際阻止に大きな役割を果たしている

 「電話は本当に息子さんでしたか」。相馬署管内の金融機関でつくる相馬地区金融機関防犯協会が6月に実施した、なりすまし詐欺の防止訓練で、東邦銀行相馬支店の小野田正子営業グループ次長(58)は、穏やかな口調で聞いた。会員の金融機関を代表して、電話を信じて現金を引き出しに訪れた顧客との想定問答を演じ、高齢者の顧客役を演じる警察官が焦った様子で「とにかく急いでいる」と話すのをなだめ、繰り返し詐欺の可能性を指摘してみせた。

 ■「金融機関」大きな役割

 なりすまし詐欺の被害防止で、大きな役割を果たしているのが金融機関だ。県警によると、県内で今年上半期に金融機関の職員が食い止めた被害は58件。もしも、この全てが被害に遭った場合の総額は1億4770万円。同期間の被害は95件、2億2587万円で、大幅に増えていた可能性があり、水際阻止の重要性は一目瞭然だ。1月に県警と金融機関が結んだ協定で、65歳以上の高齢者が200万円以上を引き出そうとする際、積極的に声掛けすることを盛り込んだ効果もあり、被害防止が着実に進んでいる。

 ある金融機関は、多額の現金の引き出しの際に店舗の幹部職員が対応するよう工夫している。「手口が巧妙化し、被害額が年々増えている状況で、被害は遠い所の話ではなく、身近なものとして意識するようになった。行員にも被害を水際で食い止めなければ、との思いが強まっている」と小野田次長は強調する。

 一方で、協定が「65歳」「200万円」を防止の目安にしたことで、それに満たない人、金額の被害が目立ち始めるなど、犯行グループの巧妙さも浮き彫りとなっている。

 ■タクシー、宅配業界も

 金融機関での全国的な被害防止の増加とともに、現金をだまし取る手口の主流は、手渡しや宅配便の利用に移行している。

 県警は、犯行グループの現金受け取り役を務め、土地勘のない「受け子」が頻繁に利用するタクシー業界や、被害者が現金送付に利用する宅配業界にも協力を求めるなど民間の力を借りながら被害防止を目指す。

 県警で防止対策を指揮する武藤裕紀生活安全部参事官(58)は「拡大する被害を防止する上で民間の協力は不可欠」と力を込める。その上で「多くの人が、なりすまし詐欺の存在に目を向け、周囲の高齢者らに注意を払う環境をつくることが被害の減少につながる」との見方を示す。