組織中枢へ切り崩し 試される警察の捜査力

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組織中枢へ切り崩し 試される警察の捜査力

「受け子を逮捕し、グループ中枢への手掛かりをつかみたい」と話す伊藤室長。犯行グループの摘発に警察の捜査力が試されている

 ここで一度下がっているんですけどね」。なりすまし詐欺の捜査を担う警察庁捜査2課特殊詐欺対策室の伊藤隆行室長(44)は、全国の被害額の推移を示したグラフを指し、こう切り出した。

 グラフでは、2004(平成16)年から200億円台で推移していた被害額が、09年に一気に96億円まで半減したのが分かる。

 伊藤室長は「08年に犯行グループの大規模な摘発が続き、大手都銀が1回当たりの振り込み制限額を設けるようになったのが影響している」と解説する。「摘発と防止策が両方効いているのが、09年の数値に表れている」との見方だ。

 ■「レンタル携帯」規制困難

 被害額は09年を底にして、その後、急上昇し、14年には09年の6倍近い566億円に達している。警察の被害防止策に対応して巧みに手口を変える犯行グループに対し、警察がそれ以降、打撃を与えられていないのが現状だ。

 「例えば、犯罪への悪用が指摘されるレンタル携帯電話を規制すればいい、との声もあるが、東京五輪を控え、外国人観光客の増加も予測される中、(身分確認などで)携帯電話のレンタルを厳格化するのは得策とは言い難い」と伊藤室長は明かす。

 振り込み限度額の設定は金融機関の協力で実現できたが、レンタル携帯電話に限らず、犯行グループが現金を送らせる手段にする宅配便、現金受け取りのために利用する私設私書箱などは本来、人の利便性を高めるもので規制が難しいのが現実だ。

 では、警察は拡大する被害にどう対処していこうとしているのか。伊藤室長は「やはり摘発していくしかない」と言い切る。犯行グループについて「アメーバのように形がはっきりせず、グループの統制が取れているのか分からないケースもある。犯人同士のつながりもさまざまで、よく分かっていないのが現状」と憂えながら、組織の実態解明に力を注ぐ方針だ。「何人か逮捕しただけでは、恐らく被害は減らない。犯行を指揮するグループの中枢にたどり着くためにも、現金を受け取る役の『受け子』を逮捕し、手掛かりをつかんでいきたい」

 ■犯人側のリスク高める

 県警のなりすまし詐欺の捜査を指揮する小林幸彦捜査2課長(30)も摘発に全力を挙げる考えを示し、こう続ける。「犯行グループにとって、なりすまし詐欺はリスクが低く、割がいい犯罪となってしまっている。摘発でいかに犯人側のリスクを高めていけるのかが警察の課題だ」(おわり)