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「学力」でぶれる公教育
【平成18年 1月1日掲載】
 2006(平成18)年が幕を開けた。21世紀に大いなる飛躍を期した本県だが、出だしの5年間は少子高齢化や過疎、大規模プロジェクトの終えん、厳しい地方経済など停滞が目立った。時代が大きく変動する中、郷土ふくしまは、県民一人一人が輝けるような力を取り戻せるか。再生には何が必要なのか。多角的に切り込むシリーズの第一部は、県づくりの基礎を担う「教育」。文部科学省の方針に従ってきた本県教育は学力向上をめぐって揺れ動き、地方分権時代に改革を迫られている。教育現場が抱え込んだ問題を追った。
3000題テストに黙々と向かう、ゆとり教育世代の中学生。大みそかの朝に始まった合宿は、元日まで続く=31日、福島市のさくら塾
難しい習熟度別指導/不満を生む平均的授業
塾依存
 福島駅東口のビルの一室は、年の瀬のにぎわいなど別世界のことのように、張り詰めた空気に包まれていた。冬休みの小学5年生たちが、真剣な表情で冬期講習に臨む。「自分一人では何もできない、何かを与えられないとだめな点が一番の問題。だから家で勉強できない」。総合学習塾さくら塾で自ら教壇に立つ大舘忠仁代表は、子どもの現状を厳しく分析した。

 塾では予習、授業、復習の習慣を徹底させる。冬期講習でも、子どもたちに家で何時間机に向かったか、予習をやってきたかをまず確認する。「学ぶ習慣を身に付けさせることが大切だが、実は学校や家庭でもできる。学校は子どもの現状をもっと把握すべきだ」。大舘氏の目に映るのは、子どもの実態をつかみきれない公立学校の姿だ。

 東日本学院学問の杜郡山校の渡辺剛学院長も、県内の公教育に疑問を投げ掛ける。「ゆとり教育で、私が学生のころと比べて学ぶことが半分になった。学力が下の子どもに授業のレベルを合わせ、上の子どもが意欲をなくしてしまう。意識の高い家庭は公教育を信用しなくなった」

 文部科学省は2002年度、学校完全週五日制の実施に伴い、「ゆとり教育」を掲げた学習指導要領を施行した。隔週五日制では、子どもたちが無為に過ごす土曜日の実態がすでに見えていた。学力低下を懸念する声が相次いだが、当時の県教委に、文科省の指示を突っぱねる動きはなかった。

 ところが、ゆとり教育に全国的な批判が相次ぐと、文科省は一転、教科書改定の度に学習指導要領の範囲を超える「発展的内容」の記述を認めるなど、右に左にかじを振った。今の中学生たちは、高校受験への道のりを見定められないほど振り回された世代。ぶれる公教育が家庭の不安をかきたて、塾依存を急激に高めていると指摘される。

 県教委が県内の小学5年、中学2年生を対象に実施した04年度学力実態調査によると、学習塾に通う児童、生徒の割合は小学5年で30・8%、中学2年で43・4%。この子たちの親世代は、塾通いなど少ない時代に育った。ギャップの大きさに戸惑いながらも、実態に気付いた家庭は子どもを塾に走らせる。

 福島大総合教育研究センターの中野明徳教授は、塾通いが増える実態を「学校で習熟度別クラス編成をしていないことが最大の原因」と分析する。習熟度の低い子どもには基本から、習熟度が高い子どもには相応の授業を提供する方法。高校受験を控えた女子生徒は「学校の授業はレベルの低い人に合わせるので物足りない」と率直だ。

 文科省も習熟度別の学習指導は推奨している。しかし、それに基づくクラス編成となると、県内の中学校では限定的だ。「勉強嫌い、勉強のできない子どもたちがあぶり出され、しかも本人が自覚させられる」と中野教授が指摘する懸念が、現場の教職員にも強い。「平均的な授業でなければ、クレームがくる。学校の先生も、子どもを塾に通わせている。それが学校教育の現状だ」
 


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