ふくしま再生TOP
地域拠点へ医師集約
【平成18年4月5日掲載】
菊地医学部長に産婦人科の常勤医派遣などを要望した横山会長(左から2人目)。県は、1人医師体制で地域医療を確保してきたが、医師集約化で大きな転機を迎えている
第2部  医 療

一診療科に複数必要/高度な内容専門細分化
「広く薄く」配置の転機
 「医師が足りないのは私たちの地域だけでないと理解しているが、ご配慮たまわりたい」。県立大野病院産婦人科の休診から2週間余がたった先月27日、福島医大の医学部長室。双葉地方町村会の首長らが顔をそろえ、会長の横山蔵人浪江町長が口火を切った。

 医大が同病院に派遣し、たった1人で患者を診療していた産婦人科医が医療事故で逮捕・起訴された。医大は代わりの医師を送り込んだが、派遣継続が困難となり、先月10日で診療休止に追い込まれている。

 県や福島医大には、医師不足に悩む市町村からの派遣要請が相次ぐ。菊地臣一医学部長(当時)は、派遣再開は困難との見通しを伝え、「大野問題でわれわれの想像以上に状況が激動している。患者と医師双方のセーフティーネットを考えないと、地域医療は総崩れになる」と厳しい表情で語気を強め、双方が妥協点を探る必要性を説いた。

 福島医大が県と連携して見いだそうとする「妥協点」は、地域の拠点病院への医師集約化だ。「現状では、患者さんが満足できなくとも、納得してもらえる医療を提供せざるを得ない」と菊地氏。集約化には医師の引きあげが伴う。双葉地方の場合、大野病院のある大熊町と隣接する双葉町の双葉厚生病院に産婦人科医2人を配置し、医師の負担軽減と医療水準の維持を図らざるを得なかった。

 要望した志賀秀朗大熊町長は「1人だけでもいてほしいが、県立だ、JAだという縄張り根性は捨てる時期なのかも」と肩を落とす。本県では、一人医師体制もままならず、診療科によっては常勤医不在で休診という事態も起きている。

 大野病院の医療事故の一要因として指摘された医師不足。福島医大と県は、産婦人科、小児科の両診療科で地域の拠点病院に複数医師を集約し、24時間の診療体制を整備する構想を進めている。しかし、県内の医師は「(医大の)教授の命令が絶対だった昔とは違い、不本意な場所での勤務を命じられれば、数カ月働いて義理を果たせば辞めていくのではないか」と、医師不足がさらに加速することに懸念を漏らす。

 県によると、人口10万人に対する医療施設の勤務医は171人で、全国38位。全国平均の201人に達するには、500人以上不足している計算。勤務医の絶対数が足りない中で、医師自身が過重労働によるストレスで心身に異常を訴え、現場を離れる深刻なケースも実際に起きている。

 地域に医師を供給する役割を果たしてきた福島医大。しかし、卒後臨床研修の導入で大都市部に研修医が流れ、診療を下支えしていた貴重な戦力は、かつての半数以下に落ち込んだ。福島医大の教授は「医大にも医者がいない。本当にぎりぎりの状態。このままでは医師をつぶしてしまう」と明かす。加えて、診療内容の高度化で専門が細分化され、一診療科に複数の医師が必要になった。「内科といっても今は5、6人の医師が欲しい。へき地でもどこでも、患者は一流の治療を望んでいる」と同教授。身近な地域で医療を提供できるよう、医師を「広く薄く」配置してきた政策が今、大きな転機を迎えている。
 


〒960-8648 福島県福島市柳町4の29
ネットワーク上の著作権(日本新聞協会)
国内外のニュースは共同通信社の配信を受けています。

このサイトに記載された記事及び画像の無断転載を禁じます。copyright(c) 2001-2004 THE FUKUSHIMA MINYU SHIMBUN