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「共生の道」模索
【平成18年8月29日掲載】
 2002(平成14)年8月29日の原発トラブル隠し発覚から4年目の夏、猛暑の東京を大停電が襲った。県民は、電源地域のあの時の混乱をいや応なく思い起こした。しかし、東京電力の原発全基停止と首都圏大停電の危機を声高に叫んでいた霞が関も、電源地域の「安全・安心」や電気の産地・消費地交流の必要を連日取り上げていた東京発メディアも、めっきり静かになった。県内の原発稼働状況が東電の供給力を十分支えるまでに復活した今、東電や政府エネルギー当局と緊張状態を続ける佐藤県政に対して、地元からは原発共生に向けた率直な意見が目立つ。「原点に返れ」と叫び続けた県の原子力政策の今を追った。
運転開始から35年、原発トラブル隠しから4年。佐藤県政の慎重姿勢と、地域経済の低迷が複雑に絡む政治環境の中で首都圏電力を担う福島第一原子力発電所
 
第4部 原子力政策
 
県難色も導入の流れ/検査技術者育成が課題
維持基準

 「高い力量の技術者が検査しても、ひびのある配管は取り換えろと言われる。どうせ取り換えるならば、業者は放射線の高い現場で検査に力を入れる必要はない。配管を交換しなくて済むような経済的な有利さがあれば、精度の高い検査をするため優れた技術者を現地に投入する」。東京・霞が関の経済産業省別館、原子力安全・保安院の幹部は一般論として、原子力規制を取り巻く経済原理と技術者流出の関係を指摘した。

 欧米流の安全確保制度

 保安院が指摘するのは、原発トラブル隠しの発覚直後に政府が導入した健全性評価制度、いわゆる「維持基準」。放射能を含む蒸気で強い圧力がかかるステンレス製再循環系配管などに、ひび割れが見つかった場合、超音波検査と科学的な評価でひびの進み具合を予測し、安全の範囲内ならば交換を求めない制度だ。

 経済的な特典を規制行政に活用し、業者に自主的・自律的な安全確保を迫る欧米流の手法。新潟県は今春、ひびが長期間進まないものに限って維持基準の導入を認めた。一方、本県は依然、導入に難色を示す。

 技術者の水準について東電は「新潟も福島も同じ」と強調する。ただ、検査の現場を担うのは東芝など原子炉メーカーの技術者。ひびを計測しても「どうせ取り換える」式の日本型検査体制は、技術者育成への投資を阻んできた。国が3月に導入した技術認証(PD)制度は、高い力量の技術者が検査した場合に特典を設けたが、全国の認定者は現在、7人にとどまる。

 県内には実践の場なし

 東電は「一定水準以上の人をお願いする」とメーカー側に注文する。しかし超音波で金属のわずかなひびの深さ、長さを見極める非破壊検査は難しい。狭い上に放射線量が多くて短時間しか作業できない現場環境下で、技術者が力量を高めるには実践を重ねるしかない。「柏崎刈羽なら検査の力量は高まる」と保安院が指摘するのは、県内に実践の場がない現状と表裏の関係を指す。

 新潟県は維持基準を了承する際、住民の「安心」にも配慮した。「このまま5年程度は大丈夫―という評価の配管は、東電が交換すると申し出た」(同県原子力安全対策課)という。

 9月定例県会で決着へ

 県内では自民党県連が維持基準導入に向けて意見集約に入った。党内に異論はあるが、双葉郡の8町村長は1月に了承しており、9月定例県会での決着へ流れはできつつある。トラブル隠し直後の県議会が維持基準の「具体化見合わせ」を意見書採択してから4年。電源地域は一歩踏み出すことで、共生への意思を示そうとしている。
 


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