【編集日記】(10月14日付)

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 JR東北線沿い。金谷川駅と松川駅の間。電車から1基の塔が見える場所がある。注意していないと見落としてしまう風景だ

 ▼今年5月の連休だっただろうか。旅行の途中らしい若者のグループの一人がこの塔について仲間に説明を始めた。毎日のように電車を利用するが、塔を話題にする姿はほとんど見られないだけに強く印象に残った

 ▼「松川記念塔」と呼ばれる。戦後最大の冤罪(えんざい)事件とされる松川事件の無罪確定を受けて建立された。事件発生は1949(昭和24)年8月。普通列車が脱線、転覆し、乗務員3人が死亡した。一審で死刑判決を受けた5人を含む20人が最終的に逆転無罪を勝ち取った

 ▼事件から半世紀以上が経過した。風化が加速するなか、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界記憶遺産」登録に向けた動きが出てきた。中心となるのはNPO法人県松川運動記念会や福島大など。公正な裁判を求めて広がった全国的な運動を、歴史的史料と位置付けて世界に伝えていく

 ▼記念塔には二度と松川を繰り返させない、との決意が込められたという。歴史は人の暮らしの積み重ね。新たな歴史のため私たちは過去から学ぶ。松川事件を埋もれた歴史にしてはならない。