【12月1日付編集日記】水木しげるさん逝く

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 世の中のあらゆる出来事は妖怪の仕業だ―。子どものころ夢中になって読んだ水木しげるさんの漫画に、そんなことが書いてあったことを思い出した。それからしばらくは、風で窓ガラスがカタカタと鳴る音にも体を震わせたものだ

 ▼水木さんの訃報に触れ、著書「妖怪画談」を読み返した。古今東西の妖怪を紹介した本だ。ころり観音として知られる恵隆寺(会津坂下町)の「だきつき柱」も描かれている。「千年以上を経た黒光りする柱をみて、目にみえないなにかを感じた」というのが水木さんの感想だ

 ▼水木さんは、妖怪は「みることが出来ない、すなわち、それは感じなのだ」と後書きに書いている。しかし水木さんの描く妖怪たちは怖くもあり、ユーモラスでもあり、その表情は実に豊かだ

 ▼風呂おけを洗わないと夜中にやってきておけに付いたあかをなめる「あかなめ」、ごみの山から生まれる「塵塚怪王(ちりづかかいおう)」―。人間社会を風刺するような妖怪も誕生させた

 ▼科学の発達によって自然が失われることを惜しみ、「目に見えない世界」への畏敬の念が薄れていく現代人に警鐘を鳴らし続けた。水木さんと妖怪たちは、自然への謙虚な気持ちを忘れるなと、私たちに教えてくれた。