【12月11日付編集日記】青木木綿

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 「希望を語る少(わか)き人と記憶を語る老いたる人と話の合はざるは固(もと)より怪(あやし)むに足らず」。森鴎外は箴言(しんげん)集「智恵(ちえ)袋」にこう記す

 ▼小堀桂一郎さんの訳では「若い人たちの話題は専ら将来の希望にかかわり、老人たちはとかく思い出話にふける。話が合わないのは当然」。箴言集は鴎外が外国の出版物を基にして書いたという。年齢の違いで時には戸惑うこともあるのは世界共通なのかもしれない

 ▼そうではあっても「老いたる人」たちの"思い出"は貴重な経験や知恵の宝庫でもある。それらは「少き人」たちの希望へとつながっているはず。伝統や文化といったものはそのようにして幾世代にもわたって受け継がれてきたものだろう

 ▼会津坂下町で若者たちが進める地域の伝統産業「青木木綿」復活への取り組みも人生の先輩たちから学びながらの挑戦だ。織物工場は安価な化学繊維の普及などで30年ほど前に廃業しているが、古い織り機の修理や織り方は当時を知る人たちの経験が大きな力となる

 ▼ふるさとの文化を守りたいという思いは、お年寄りでも若者であっても変わらない。共通の目標も、独特のしま模様と丈夫さが特徴という木綿が、再び商品となる日が一日も早く来ることだ。