【1月16日付編集日記】小さな靴

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 彼女の悩みは21年前に始まった。郡山市の街角にある小さな店が頼りだったのに、その日を境に入荷が途絶えたのだ。阪神大震災が靴の産地・神戸を襲った

 ▼長田区の町工場で作られた靴には昭和世代の小さな足にも合う、履き心地のいい商品があったが、産地は大打撃を受けた。復興を期す間にも時代は移り、発育のいい平成世代向けの大きい靴が主流になった。小さな靴を探すのは容易でない

 ▼再生にかける神戸の努力は今も続いている。魅力的な靴を世に出すため、さまざまな工夫を凝らしているが、一度途切れた作り手と買い手との絆をつなぐのは、ガラスの靴の持ち主を捜すより難しいかもしれない

 ▼東日本大震災と原発事故の被災地では、農家や中小企業の事業再開へ政府が新年度、「右腕」を派遣する。商品開発や販路開拓などで実績のあるアドバイザーたちだ。長期避難でうちひしがれた被災者の自立心を奮い立たせてほしいと願う

 ▼心配なのは、口は出しても一緒に汗をかいてくれない「助言事業」止まりになること。3年たてばモデル事業が終わって「さようなら」という置き去りの例をいくつも見てきた。阪神は21年たっても苦悩が続く。福島はまだ5年にすぎない。