【3月27日付編集日記】はなぬすびと

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 寒気の出口もみえて関東で足踏みしていた桜前線もようやく動きだしそうな気配。桜はまさに春の象徴だが、昔から桜に悪さをする不届き者も多い

 ▼花盗人(はなぬすびと)という言葉がある。この言葉が題名になった狂言では、花(桜)を盗みに入って捕まった男が「この春は花のもとにて縄つきぬ烏帽子桜と人や見るらん」と歌を詠み、その風流さから許される

 ▼鎌倉時代の説話集「古今著聞集」にも歌人藤原定家が御所の桜を接ぎ木しようと、こっそり枝を切った話がある。結局ばれて定家には御所から、誰が切ったのかとがめるな(接ぎ木した木に)花が咲けば分かる―との歌が届く

 ▼昔から花に魅せられ枝を折る者に日本人は甘いようだ。だが現代の盗人には、許されるような風流さはない。先日、伊達市で桜の苗木が根こそぎ盗まれる事件が相次いだ。有志が花の名所にしようと、里親を募り植樹したばかりだった。まさに犯罪である

 ▼定家の場合、天皇とその桜の花をたたえる歌を返して落着したようだが、風流さのみじんもない盗人は、どう申し開くのか。警視庁や警察を指す符丁に「桜の代紋」があるがこちらの桜は褒めたところで、犯罪を風流に受け流すなどという甘さはもちろんない。